図解・ビジネスフレームワークのトリセツ 〜5W2H〜

ちょっとご無沙汰しておりました図解・ビジネスフレームワークのトリセツ。今回第2回は、私がかなりの頻度で使ってます「5W2H(Who, What When, Why, Where, How, How much)を取り上げたいと思います。「そんなのいまさら。。。」という方もおられるかもですが、以外と使い勝手の良い、汎用性のあるフレームワークだと私は思っております。

皆さんもよく「事業計画」的なものを考えたり、資料としてまとめたりされると思います。「事業」というと少し括りが大きいかもしれないですが、そこまで大きな大きく無くても、例えば新製品・新技術の開発だとか、新規顧客の開拓、新人の教育など、「事業」という大きな括りからブレイクダウンした形、いわゆるプロジェクト的なものでしょうか、これらに関わり、プロジェクトの運営を主導したり、またメンバーとして関わったりされていると思います。

そういった資料などを作成したときに、例えば上司にその資料を提出して、「スケジュールが明確になってないじゃないか」とか、「責任者が明確になってないぞ」とか、色んな突っ込みが入ることってありませんか?突っ込みが入ること自体は極めて重要でありがたいことなので、それ自体を否定するつもりは全くないんですが、そういう「突っ込み」の無い資料で上司に「抑えるべき所は抑えとるな」という有難いお言葉を頂きたいなというのも人間の心情だと思います(笑)そんなときに、是非この「5W2H」を使って頂きたいんですね。

そこで、私がどんな感じで使っているかの事例を3つ挙げまして、実際の使い方をご紹介してみたいと思います。

1.事業計画書やプレゼン資料作成で使う

これは前段で述べた通りの一番スタンダードな使い方です。例えば一営業マンが新規顧客の開拓の作戦を練っているという場面で考えてみましょう。私の場合は、A3の白紙の紙を用意しまして、まず適当に作戦を考えるフレームワークとしての「5W2H」を書きます。「Who、When、Why。。。」といった感じで。そして次に、各「5W2H」について、「このシチュエーションであれば何を明確にしないといけないのか」の項目を思いつくまま考えていきます。例えば「Who」だったら、まずは「ターゲット顧客」ですね、そして「各アクションアイテムの責任者」、あたりでしょうか。そしてその後に各項目の具体的な名前を挙げていくという形で作戦を組み立てていきます。そしてその順番で事業計画書やプレゼン資料に落とし込んでいきます。

  • Step1 白紙の紙に「5W2H」を書く
  • Step2 各「5W2H」について、このシチュエーションで明確にしないといけない項目を考える
  • Step3 項目ごとに具体的な名前を考える
  • Step4 Step1〜Step3の内容を事業計画書、プレゼン資料に落とし込む

そして、私の経験上ではこの7つの中の「Why」は特に一生懸命考える必要があると思います。どのケースでも必ず「何のためにこれをやるの?(=本件の目指す目標)」「なぜその顧客を選んだの?」「なぜその作戦を選んだの?」と、「Why」を聞かれるんですね。ここで「実は次になぜなのかを用意しておりまして。。。」という具合に「Why」を説明できるようにしておくと非常に話が早いですね。逆に言うと、ここが弱いとどれだけ頑張っても積極力が無く、今まで頑張ってきたことが水の泡。。。ということもありますので、是非ここは「Why」の明確化を頑張って頂くことをお勧めします。

また色々考えていると、煮詰まってくることが結構ありますが、そんな時は「When(スケジュール)」に行ってしまうと結構先に進むことがあります。仮説でもいいので目標達成のための仮のアクションアイテムとスケジュールをざざっと引いてみる。すると、意外に何をどのタイミングにまでやらないといけないのかがわかってきて、これをベースに5W2Hが具体的になってきます。

下記に仮想の「新規顧客開拓」の5W2Hを載せておきますので、参考にしてください。


2.会議のファシリテーションに使う

皆さんも色々な会議を主催されると思いますが、会議をやっても本来決めないといけなかったことが決まっていない。。。なんてことが良くあると思います。そんな時にこの「5W2H」がかなり使えます。

まず、会議のアジェンダづくりの段階で、この「5W2H」を意識して作ります。そして会議のファシリテーションではこのアジェンダに沿って、「5W2H」が明確になっているかどうかをチェックしながら会議を進めます。またホワイトボードに「5W2H」を書き、決定事項も書きながら参加者全員で共有しつつ、明確化を確認すると更に効果的ですね。そしてアジェンダに会議で決定した「5W2H」をメモしながら、アジェンダと決定事項をベースに「5W2H」を明確に「文字化」した議事録を送付する。こういった形で会議を進めると結構決めるべきことが決まってきますね。

  • Step1 「5W2H」を意識した会議のアジェンダを用意する。
  • Step2 アジェンダに沿って「5W2H」が明確になっているかをチェックしながら会議を進める。
  • Step3 アジェンダと決定事項をベースに「5W2H」を「文字化」した議事録を送付する。

3.他の人が作成した資料を「読み込む目」として使う

皆さんがプロジェクトなどに参加される時、自分以外の方が作成された資料を目にすることがよくあると思います。そんな時にこの「5W2H」が明確になっているかどうかを確認しつつ資料を読み込むと、資料の理解が更に進むと同時に、その資料の「不備」がわかるようになってきます。そうなると、「Whoの部分をこういう風に明確にしたほうがいいのでは」などの建設的な提案により、あなたがプロジェクトに大きな貢献ができるようになると思います。また、そういった「不備」のある資料を「反面教師」にして、自分の事業計画・」資料作成能力の向上に役立てる、といった使い方もできるかと思います。

改めて考えてみると、この「5W2H」というのは、資料をまとめやすいとか、会議の運営がやりやすいとかそういう小さな部分ではなく、「何かを成し遂げるために欠かすことができない要素」ということかなと私は考えています。是非「5W2H」をがんがん使いまわして、皆さんの関わっている様々な「事業」を成功に導い頂きたいと思います。


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経営者・はるな愛の「シンプルで等身大な経営術」に感銘

最近テレビで見ない日はないほどの超人気タレントであるはるな愛氏(本名:大西 賢示)。はるな氏はタレント業だけでなく、三軒茶屋お好み焼き店とバーの2店、桜新町お好み焼き・鉄板焼き店1店、計3店のお店を経営する「エンジェルラブ株式会社」の社長としての一面も持っています。また7月26日(明日ですね)東京港区の飯倉に新店がオープン、お好み焼きの通販も立ち上げ予定と、経営は極めて順調とのこと。そんなはるな氏の経営者としての一面を垣間見ることができるインタビュー記事がアップされていますので、ご紹介させて頂きます。

はるな愛、「経営者」というもう1つの顔壮絶な人生経験を活かしたマネジメント方法とは?(CareerZineより)

中学生時代のいじめ、決死の覚悟の性転換手術、売れない芸人時代などの「人生の修羅場」を経てたどり着いたはるな流の経営術のベースは「シンプルで等身大のコミュニケーション」。インタビューにてはるな氏は自らの言葉でこう語っています。

みんなにはみんなの人生があります。私は社長として、みんなの貴重な時間を費やしてもらっているので、損してほしくないんですね。それは経験もお金も。だから、私が番組でもらった商品は、忘年会でクイズをしてみんなでわけたり、このあいだも松坂牛をみんなで食べたり。私がもらった得はみんなでわけたいと思っています。私の人生を買ってくれているみんなの人生なので。旅行とかバーベキューとかもしょっちゅう行きますよ。本当にみんなよくやってくれているので。

このインタビュー記事を読んで大変感銘を受け、色々ネットで調べていたら、タレント業で忙しい合間を縫って各店舗を訪れ、従業員だけでなく、お客さんとも「シンプルで等身大のコミュニケーション」によりお店を盛り上げているはるな氏を垣間見ることができる動画を発見!これも合わせてご紹介しておきます。

最近環境変化が複雑になっていて、色々考えることが複雑になりがちなんですけど、そういうのって結局「独りよがりの自己満足で、おかしいんじゃないのか」と気づかされ、ハッとすることが結構ありまして。。。

複雑な時代だからこそ、その時代を「シンプルな形に解きほぐし」、そこに「シンプルでわかりやすい作戦」を展開していくことが必要では。そんなことを考えさせられ、「ハッ」という思いにさせてくれるはるな愛氏のインタビューでした。

今回のものは前編とのことですので、後編にさらに期待したいと思います!

素晴らしき、この人生

素晴らしき、この人生

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図解・ビジネスフレームワークのトリセツ 〜クロスSWOT分析〜

ビジネスシーンにおいて、フレームワークをお使いになるケースが多々あると思います。ですが、なかなか教科書どおりいかないということありませんか?私も色々使ったりしますが、正直なかなかうまくいかないんですね。。私も色々試行錯誤中ではありますが、何かの参考になればということで、私なりのフレームワークの使い方をちょこちょことご紹介してみたいと思います。第1回は非常にポピュラーなフレームワークであります「SWOT分析」で。。

SWOT分析は「クロスSWOT分析」で

SWOT分析は、外部環境を「機会」「脅威」で、内部環境を「強み」「弱み」で整理し、その企業が抱える問題・課題を明らかにするというフレームワークとしてよく使われております。以前は単に「機会」「脅威」「強み」「弱み」を並べるだけだったのですが、最近は「クロスSWOT分析」が当たり前のように使われております。ですので「SWOT分析」とは「クロスSWOT分析」であると考えるのが正しいと思います。

「クロスSWOT分析」とは、外部環境と内部環境の下記の4つの掛け算から、環境変化の現象だけを捉えるのではなく、問題・課題を深堀りして、SWOT分析の次のステップである「戦略の具体化」に向けてあるべき方向性を示すという、大きな役割を担っています。

  • 「機会」×「強み」⇒強化戦略:内部の強みを活かし、市場の機会を捉え更に伸ばす。
  • 「機会」×「弱み」⇒補完戦略:内部の弱みを補完し、市場の機会を捉える。
  • 「脅威」×「強み」⇒逆転戦略:内部の強みを活かし、市場の脅威に対抗し、逆転する。
  • 「脅威」×「弱み」⇒回避戦略:内部の弱みを解消し、市場の脅威の影響を最小限にする。

また最近は、外部環境の「脅威」を何らかの方法で「機会」に変える「転化戦略」という考え方も最近出てきており、クロスSWOT分析はより多面的に発展しつつあります(上記の図表の「機会」と「脅威」の間が「転化戦略」です)。

「機会・脅威・強み・弱み」は「漏れなく」「抜けなく」「ダブリなく」で

クロスSWOT分析を行う際に、いきなり図表1の最終完成図を準備し、「機会」「脅威」「強み」「弱み」を書き込んでいませんでしょうか?これはちょっと待って頂きたいところです。まずは「漏れなく」「抜けなく」「ダブリ無く」情報を抽出するために、エクセルで下記のような表を使い、「関係情報の棚卸」をやってから、「必要なエッセンス」を抽出したほうが、より良い分析になると思います。下記はあるポテトチップスのトップメーカーA社をイメージした「関係情報の棚卸」です。

その時、下記のような外部環境・内部環境を切る「切り口」を設定してから、関係情報を挙げていったほうが効果的です。この切り口には、「3C」「4P」「5F」「バリューチェーン」など、一般で良く使われるフレームワークを使うと「漏れ・抜け・ダブリ」解消に繋がります。その意味では、「クロスSWOT」は「色々なフレームワークの総本山」と言えるかもしれません。ただシチュエーションによりますので、下記の切り口を参考に、シチュエーションごとに切り口を変えて頂くのが良いと思います。ちなみに参考ですが、私は切り口の一覧表をエクセルで作成し手帳に貼り付けておりまして、「クロスSWOT」をやるときにこの一覧表を眺めて最適な切り口を選択しています。

[外部環境]

  • マクロ環境(社内、政治、経済の動きなど)とミクロ環境(業界、顧客、ライバルなど)
  • 3Cの「Customer(顧客)」「Competitor(ライバル)」
  • 5フォースの「同業他社」「新規参入者」「代替手段」「競合他社」「供給業者」

[内部環境]

  • ヒト、モノ、カネ、情報、時間
  • 3Cの「Company」
  • 4Pの「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(販売チャネル)」「Promotion(販売促進)」
  • バリューチェーン「調達⇒R&D⇒製造⇒販売⇒サービス」

「クロスSWOT」は細かい部分にこだわらず、「行ったり来たり作戦」で作り上げる

「クロスSWOT分析」をやり始めると、情報の分類で微妙なところがあり、「これは<強み>だろうか、<機会>だろうか」など悩み始めることが多々あります。ここで止まってしまうと、本来の目的である「戦略の方向性出し(強化・逆転・補完・回避・転化)」までなかなか行き着かないということが発生してしまいます。その場合は、クロスSWOTはひとまずしっくり行くほうに分類した上で、先に進めて一回最終形を作ってしまうことをおすすめします。

ひとまず「戦略の方向性出し」のステップまで行ってしまって、方向性をある程度作ってみた後にまた「クロスSWOT」に戻るという、「行ったり来たり作戦」で作り上げていったほうが絶対トータル時間が短く済むし、クオリティーも高くなると思います。先ほどの「関係情報の棚卸」からクロスSWOTに展開し、ポテトチップスメーカーA社の戦略の方向性を出してみたのが下記になりますが如何でしょうか。。


上級者は「戦略の方向性」から逆算でクロスSWOTを作る

また、これは上級者向けかもしれないですが、「戦略の方向性⇒クロスSWOT」と逆で進めるやり方も有効です。つまり、ある程度外部・内部環境を理解した段階で、そこから「クロスSWOT」には行かずいきなり「戦略の方向性の仮説」をつくり、その仮説が正しいことを証明するために「クロスSWOT」を作成し、正しくない場合は仮説を修正するという「行ったり来たり作戦」で作り上げていくやり方です。

ただし、この時も先ほど申し上げた、機会・脅威・強み・弱みは「漏れなく、抜けなく、ダブリなく」は重要です。「戦略の仮説」と関係がある情報だけでの検証は間違った方向に行ってしまう危険性がありますので、「関係情報の棚卸」をおろそかにせず、「漏れ・抜け・ダブリのない情報」での検証はしっかりとやりましょう。

また、「クロスSWOT分析」は、あくまで戦略の方向性を出す「ツール」に過ぎないので、上級者は「クロスSWOT」の図表などは見せずに、戦略の方向性をズバリ言って、さっさと戦略の具体的な内容に踏み込んでいきます。クロスSWOTは戦略の方向性を導くためのプロセスであり、そのプロセスは尋ねられたら見せればいいのであって、尋ねられなければ見せる必要はなく、プレゼン資料でも本編ではなく参考資料レベルでつけておくのが適切であることを覚えておいて頂きたいと思います。

クロスSWOTの図表をばーんとプレゼンの中で派手にご披露したいという気持ちはわかるのですが、クロスSWOT分析自体が「目的」となってしまっては本末転倒になってしまいます。あくまでクロスSWOTは戦略の方向性を導くための手段。ここを取り違えないように気をつけましょう。

従来SWOT分析は環境変化を整理し、問題点・課題を明らかにするフレームワークとして使われてきましたが、「クロスSWOT分析」に発展させることにより、「戦略づくり」にまで使っていくことができる強力なフレームワークです。腕を磨くためにはやはり「場数」を含むことが一番。是非どんどん使って頂きたいと思います。


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梅田望夫さんに関するネット上での騒動で私が思う4つの「なぜ」

先日6月1日と2日に、IT mediaというページに梅田望夫さんのインタビュー記事が掲載されており、ネット上で話題というか、騒動になっております。。私も読みました。

日本のWebは「残念」梅田望夫さんに聞く(前編)
Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編)

私は再三申し上げておりますが、梅田望夫さんの著書にインスパイヤされてこのブログを始めましたし、実際梅田望夫さんとも一度ですがお会いしたことがありますし、メールでもやり取りをさせて頂いております。

私はこのIT mediaというサイトが掲載したインタビュー記事に大変怒りを感じており、何も言わず静観すべきかとも思いましたが、誰に何を言う意図があるわけでもありませんが、私なりの思ったことを書いておくべきと思いまして、私がどうしても腑に落ちない「4つのなぜ」について書かせて頂きます。少々言葉が荒くなるかもしれませんがご了承下さい。

  • なぜ1:なぜこれからのWebを育んでいくべき存在であるIT系メディアが自らWebを殺そうとするのか
  • なぜ2:なぜ本業を少し離れて「自分が今まで愛してきた趣味」の話をすることがいけないのか
  • なぜ3:なぜ「梅田さん=Web進化論」と決め付けるのか
  • なぜ4:なぜ「一流vs一般」という短絡的で旧態的な対立概念だけで捉えようとするのか

なぜ1:なぜこれからのWebを育んでいくべき存在であるIT系メディアがWebを殺そうとするのか

メディアが何か記事を掲載する際(インタビュー記事であっても)、必ずその「狙い」というものがあるはずだと思うんです。キーメッセージが。そしたら、今回のインタビュー記事の狙いは何だったのかと考えると、記事を読んでもよくわからない。あえて何だろうと色々考えてみると、「梅田さんがWebの世界から将棋の世界に移り、Webを見限ったということを言わせよう」という、浅はかなレベルの低い意図しか見えてこないんですよ。そういう風に誘導しようしようという意図が見え見えで、重箱の隅を突っつくようなしょーもない質問ばっかり。

Webってまだ一般的なものになって20年も経ってないですよね。まだWebの存在って成人になったか、なってないかぐらいだと思うんですよ。人間で言えばこれから社会に出てひとり立ちしようかというところまでも言ってませんよね。そういう微妙な時期にいるWebを今後大きく育んでいくべき存在じゃないんでしょうか、IT mediaって。

今回のインタビューをWebに関心を持っている高校生が読んだとしたらどう思いますかね。さすがに高校生でも「何か変」「Webって怖い」って思うんじゃないでしょうか。そうやって、本来Webを育んでいくべき存在であるIT mediaが自ら「Webを殺す」ような記事を掲載し、そしてその行く末は自分の首を絞める結果になると思うんですよ。

要はアクセス数稼げればそれでいいんですかって思いましたよ。私は個人のブログで色々な意見が出るのは良いと思うんですよ。それがWebの魅力ですから。但し、Webをビジネスとしている人たちが自らのWebメディアで今回のような「Webを殺す」ような記事を掲載するのはなぜなのか、全く理解できません。もっと「Webを育んでいく」という発想でサイト・記事を構成すべきだと強く思います。

なぜ2:なぜ本業から少し離れて「自分が今まで愛してきた趣味」の話をすることがいけないのか

今回のインタビュー記事は梅田さんが最近発刊された著書「シリコンバレーから将棋を見る」について語るということが発端になってるんですが、なんでそんな発想になるのか全く理解できないのですが、梅田さんに「Webを見捨て将棋界の人になると言わせたい」「(棋士のような)頭のいい人はすばらしいと言わせたい」という流れの強引なインタビューなんですよ。梅田さんは本業の経営コンサルティングの立ち位置はそのまま維持しつつ、少しだけ本業を離れて、ずっと大好きで追っかけ続けている将棋の話の本を書かれただけなのに、それを「Webを見捨てた」かの言い方は短絡的にも程があります。

経済学者が本業を離れて大好きなワインの話をしたりとか、本を書いたりすることもあるでしょう。ちょっと本業を離れた趣味の本を書いただけでもう本業から足を洗うなんてことになりますか?絶対にならないですよね。その経済学者の方が「いやーやっぱり一流のワイナリーで生産されたワインは何とも一流の味が楽しめますね」とか言ったら、それは「一流賞賛・一般人軽視」ってなりますか?ならないですって。

私も「シリコンバレーから将棋を見る」を読みました。確かに一流の棋士の方々を褒め称える記述も多数あります。ですが、それは「一流のワインがおいしいね」と同じで、ある「人・もの」の素晴らしさをある意味芸術的な視点で褒め称えているだけなのに、なんでそれが「頭のいい人はすばらしいとおっしゃっている印象を持つ」という発想になるのか。梅田さんもブログで取り上げられているんですが、「もうおっさんうれしくて仕方がない」(極東ブログの書評)」という思いで「シリコンバレーから将棋を見る」を上梓されただけなんですよ。

自分が愛してきた趣味の世界の素晴らしい人・ものを素晴らしいと言っているだけなのに、なんでこんな極端な論理になるのか。私には全く理解できません。

なぜ3:なぜ「梅田さん=ウェブ進化論」と決め付けるのか

私は梅田さんの著書を全部読んでますし、ブログ・インタビュー記事などもほとんど目を通しているつもりです。その上で考えてみると、梅田さんの一番言いたいことが書いてある本は「ウェブ進化論」ではなく、「ウェブ時代をゆく」だと私は思っています。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

私は、「梅田さんはWebの人ではない」と思っているんです。「ウェブ時代をゆく」を読んで頂けるとわかると思うんですが、梅田さんが語る「Web」とは、現在まさしく起きている時代の大きな変化の一つであって、メインテーマは「Web隆盛をはじめとするこの時代の大きな変化にどう立ち向かっていくか」ということだと思うんです。ですので、この時代の変化に立ち向かっていくための「手段」はWebだけではないし、実際「ウェブ時代をゆく」ではWebに限定しない様々な方法論が提案されています。

ウェブ進化論」では確かにGoogleを賞賛するような内容ではあるんですが、「ウェブ時代をゆく」では、「そしたらGoogleが引き起こす時代の変化にどう立ち向かっていったらいいか」ということについて丁寧に述べられていて、「コモディティー化しないと固く誓う」という、Webの世界に限定されない非常に普遍的な価値観を述べられています。

梅田さんのスタンスは「今起こっている時代の大きな変化に対し、どのようにサバイバルしていくかの方法論を、Webに限定されず提案していく」ということであり、「梅田望夫ウェブ進化論」という短絡的な公式で捉えるのはもうやめてほしいと私は思います。

今回のインタビュアーに「ウェブ時代をゆく」の再読をお勧めします。

なぜ4:なぜ「一流vs一般」という短絡的で旧態的な対立概念だけで捉えようとするのか

「なぜ2」でも書きましたが、梅田さんが一流の棋士たちの生き様をあまりにも褒めるものだから、インタビュアーは「一流 vs 一般」という対立概念を無理やり持ち込んで、梅田さんに「一流が好き(非一流は。。。)」と言わせたい意図見え見えのインタビューを行っています。

Webというものは、本来特権階級の人達で独占されていた「情報の保有権・発信権」を一般の人でも容易に獲得できるようにして、一般の人達が持てる力をエンパワーメントしようという狙いのものだと私は思っていて、梅田さんも著書の中でこのことを再三述べられています。

Webは徐々にかもしれませんが確実にその狙いを実現していて、私のような一般人がこうやって何かを発信するきっかけを得たり、また一般的に学歴が低いと言われる人達がWebの力を使って会社を立上げたり、上場企業の社長になったりと、旧来には無かった新しい動きを実現させています。ホームレスだった方が上場企業の社長になったりもする事例もあるんですから。

梅田さんはそのことを十二分にご理解されていて、私のようなわけのわからない一般人にも会って頂けたりするわけですよ(梅田望夫さんにお会いすることができました!)

つまり、Webの世界が隆盛すればするほど従来あった「境界線」では区分できない新しい動き・世界がどんどん生まれており、「一流 vs 一般」という対立概念はもう「石器時代の大昔の概念に過ぎない」ということだと思うんですよ。

他にも、Webのおかげで「都市 vs 地方」という概念にも風穴を開けつつあるし(Rubyまつもとゆきひろさんが島根県松江市にお住まいであったりetc.)、「プロ vs アマ」という概念にも挑戦するような事例も出てきています(勝手広告の事例 etc.)

Webの隆盛でせっかく生まれつつあるオープンでフラットで自由な世界を、今回のインタビューのような、ある偏った思想で「壊す」のは本当にやめてほしいです。もう「一流 vs 一般」という短絡的で、石器時代的な捉え方はもうやめにしませんか。

最後に:もっと「Webを育む」気持ちを持ちましょうよ

私は今製造業に従事しているので良くわかるんですが、これからの将来、製造業で雇用を維持・増加させることはかなり厳しい状況です。みんなが「ご飯を食べていく」ということを考えると、Webに代表される新産業は雇用の担い手をして本当に重要な役割を担っています。来年卒業の新卒就職活動なんてもう本当に大変ですよ。学生さんには本当に気の毒というしかない状況です。従来型の大企業で内定を獲得できなかった学生さんが、何とか新興のWeb関係の会社で職を得ることができたということが現実に起こっているわけです。

Webが市民権を得てからまだ20年も経ってません。まだ成人ではないと思うんです。ですので、Webに関わる人達が今回のインタビューのような醜い足の引っ張り合いをするんじゃなくて、手を取り合って、みんなで協力して「育んでいく」という発想で仕事に取り組んでいかなければいけないと私は思います。特にIT mediaは、IT media以外でも素晴らしいサイトを沢山お持ちで私も好きなサイトですので、今回のインタビューのようなすごく偏った記事を掲載するようなメディアではなく、もっと大きな「Webを育むリーダー的存在」に是非なってほしいと節に願うばかりです。



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「検索は、するな。」の意味を痛感した一ヶ月の「商店街診断」

本当にすいません。。一ヶ月以上更新が滞っておりました。。実は理由がありまして(言い訳?)この5月、1ヶ月に渡りまして中小企業診断士として東京の某繁盛商店街の商店街診断に従事しておりました。

日本全国に商店街は数多くございますが、その中で繁盛している商店街は全体の2%しかない状況であります。日常の本業をやりながら平日夜と土日を使っての診断でしたので、大変厳しいものでありましたが、その2%の成功事例にダイレクトで関われたことは本当に幸せなことであり、学び多き充実した一ヶ月でした。

そんな一ヶ月の間に、人材コンサルティング会社・ワイキューブの社長である安田佳生さんの著書「検索は、するな。」に偶然に出会ったんですが、今回の一ヶ月の商店街診断の中で、この「検索は、するな。」の意味をとても痛感したんですね。そのことについてちょっと書いてみたいと思います。

検索は、するな。

検索は、するな。

「検索は、するな。」とは何か

私もそうなんですが、人間は何かを知りたい時に、どうしてもすぐに答えを外に求めようとしてしまいがちですよね。誰かに聞いたり、本を読んだり、そしてネットでググったりしたり。。。確かに手っ取り早いし、自分の知らないことを発見できたりするので「検索」というのは非常に有用であることは私も認めるんですが、ことコンサルタントとして何かを提案するというシチュエーションの場合、「検索結果」というのはその正面のお客様の個別の課題に適切に対応した「個別・具体的な提案」にはどうしてもなりにくいんですね。

安田さんは「検索は、するな。」のにおいて、この検索に安易に頼ることの危険性を述べられています。何かを知りたい時や、何かを解決しないといけない時の答えは「自分の中」にしかなくて、その「答えの出し方」をオリジナルで作りあげる努力をする必要があり、それが出来上がれば、その人の人生を景色をも変えてしまうほどの力を持つはずであると。

商店街診断で痛感した「検索は、するな。」

商店街が抱える問題というのは実はどこも似たり寄ったりのところがあり、「商店街活性化」などのキーワードで検索すると、それはすごい数の事例が出てきます。今回の商店街診断では、まず来街者のアンケート調査、通行量調査、各個店の経営実態調査などの現状把握をやり、それをもとにSWOT分析で課題を明確にし、具体策を提案するという形で進めたのですが、SWOT分析であぶりだされる「課題」というのは有る意味似たり寄ったりなんですね。なんだけど、それを解決する「具体策」は、その商店街ごとの現状に合わせた「個別・具体的な提案」でないといけないんですね。

なんですが、この「具体策」もネットで検索するとものすごい数の「具体策」が出てくるわけなんです。そうなると、納期が決まっている状況ですので、検索したものからピックアップして、「これでいいや」という感じで検索した結果に若干毛が生えた程度の「個別の現状を考慮していない一般的具体策」を提案してしまうんですね。。

私は今回商店街診断中にこの「検索は、するな。」に偶然にもめぐり合い、「ちょっと待てよ」と思いまして、「一回ぎりぎりまで検索するのを止めてみよう」と誓ってみたんですね。そして「自分がこの商店街のお客さんだったらどうなっていると嬉しいか」というお客さん視点に立ち、今日はこのテーマについてずっと考える、そして明日はこのテーマについてずっと考えるという感じで、朝ごはんの時も、通勤の時も、ランチの時も、トイレの時もと、ずーっと考えて見るようにしたんですね。

よくお笑いの世界で「お笑いの神が降りてきた」という話を耳にしますよね。これが私も本当に不思議なんですが、ずーっと同じことを考え続けていると、「提案の神」といいますか、「ひらめきの神」といいますか。。降りてくるんですね、これが。普通ではなかなか考え付かない「個別・具体的な提案のアイデア」が私にも降りてきたんですね。。

そして、この神がかりな(本当か??)アイデアに本当に価値があるのか、実現性があるのかを検証するために、ここで初めて「検索」を使ったんですね。ここでアイデアをふるいにかけて、筋の良いアイデアを形にしていったというのが今回試みた「答えの出し方」でした。

では商店会の方の反応が気になるところですが、、、まだこれはわからないんですけど、提案内容に一定の評価は頂けたようです。もし私達が提案した内容の中で一つでも実現されれば、本当に「提案・アイデアの神が降りてきた!」と言えるんですけどね。。これは乞うご期待ということで。。

「検索」との付き合い方、そして「自分なりの答えの出し方」

私の場合、一番「神が降りてくる」可能性が高いシチュエーションというのがございまして。。誰も居ない部屋や会議室に一人こもり、ホワイトボードや白紙のA3紙一枚を用意し、そのシチュエーションでずーっと考え続け、思いついたことをどんどん不定形で書いていき、おぼろげなイメージを「見える化」しながら、一つの形にしていく、という「答えの出し方」をやることが多いですね。ですので、会社でも突然行方不明になったりします。

そして、そこで出てきた「答え」の実現性や、他の成功事例などがあるかなどの「裏を取る」作業で「検索」をフル活用し、その「答え」の「筋が良いか悪いか」を検証しながら「答え」を形作っていくというフローが良いかなと考えています。それをパワポ一表でまとめると、こんな感じでしょうか。。

しかし、この方法の欠点が無いわけでもありません。それは、もう皆さんもお気づきだと思いますが、やはり「時間がかかる」ということなんですね。これに関しての処方箋はなかなか難しいですね。。今回の商店街診断でも実現出来なかったのですが、「ある程度の予備調査が終わった段階で、本格的な調査と仮説レベルの課題抽出・具体策検討をパラレルで流し、調査結果がまとまった段階で、仮説の検証を調査結果と検索を使ってやる」という、有る意味当たり前な進め方しかないのかなと感じています。

この考え方も皆さんが属されている業種や、時間軸の感覚、個人の志向性によって全然当てはまらないことも多々あると思います。ではありますが、特にクリエイティビティー(右脳系)を要求されるシチュエーションでどのように答えを出していくか、そしてその中で「検索」という「便利な道具」をどう位置づけるかを考え、「わたしなりのオリジナルの答えの出し方」を編み出すというのはとても意味があることだと思います。中にはそれで本まで書いてしまい、本当に自分の人生の景色をがらっと変えてしまう人がいるかもしれませんね。

そんなことを考えさせられた約一ヶ月の商店街診断でした。この度お世話になりましたT先生、商店会の皆様、一緒に取り組んだチームの皆様。ありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。

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「勝手広告」に見る「自分の力を増幅する装置」としてのネットの力

前回のエントリー祝・梅田望夫さんブログ復活 〜「時代の力」と「時代の荒波」〜で、梅田望夫さんのJTPAシリコンバレー・カンファレンス(2009年3月21日)での講演「自分の力と時代の力」をご紹介させて頂き、恐縮ながら下記のようなまとめをさせて頂きました。(このまとめを「いいですな」と褒めて下さった方がおられました。ありがとうございました。)

自分一人の力だけではたどり着くことができない場所に自分を運んでくれる「時代の力(世界経済の力、日本の力、自分が選んだ産業や得意領域の持つ力)」というものが過去存在したんだが、この「時代の力」が段々と弱まっていて、「自分の力」で自分の未来を自分で切り開いていかないといけない時代になっている。ではあるが、インターネットに代表される「自分の力を増幅する装置」は依然と比べ物にならないほど充実しており、こんな時代だからこそ、この「増幅装置」をフル活用し、「自分への投資」を継続しなければいけない。

この中で語られている「自分の力を増幅する装置」という言葉。まさしくこの言葉を実感させられるお話に触れましたので、今回ご紹介させて頂きます。

ネット上で増殖する「勝手広告

日経産業新聞に毎週火曜日に掲載されている高広伯彦さん(博報堂電通GoogleのAd Sales Planning Team Senior Manager→現在独立、「スケダチ|高広伯彦事務所」社長)の「メディア原論」というコラムをいつも楽しみに読んでいるのですが、2009年4月14日のコラムで「勝手に作られる広告」という記事がありましたのでご紹介したいのですが。。

簡単にご説明すると、生産者や販売元ではなく、消費者やユーザーが「勝手」に作る広告が最近ネット上で増殖しているというお話。確かにGoogleで「勝手広告」と入れると、多種多様な商品の勝手広告が出てきます。



これらの「勝手広告作家」の中にはかなりの強者が存在しているらしいのです。ある勝手広告作家が学習塾Z会の「勝手広告」を作成したところ、Z会に「オフィシャルな広告」として認められ、逆にZ会から正式に依頼を受け、「勝手広告」テイストな「オフィシャル広告」を作るという現象が起きているというのです!「勝手広告作家」がいつのまにか「オフィシャル広告作家」になったという。。。

Z会が勝手映像作家神酒大亮氏に広告作成を依頼したことに関するプレスリリース


「増幅装置」を使って「勝手にやる」ことの重要性

この事例こそが梅田望夫さんがおっしゃる「自分の力を増幅してくれる装置」と言えるんじゃないかと思ったんですね。。プロとアマチュア、オフィシャルとプライベートなどの従来対立したものと捉えられている概念の間にあった「壁」をとっぱらい、「作品として価値があるかないか」で判断され、評価されるオープンでフラットな世界が広がってきているという事例だと思います。こういうのってものすごく単純に「おもろい」し、何か「わくわく」させられますよね。

また、この事例に触れて私がちょっと思ったのは、「誰にも頼まれていないことを、自分の意思を持って、勝手にやることの重要さ」ということなんですね。

前回のエントリーで、「仕事と幸福、そして、人生について」の本の中の下記の言葉をご紹介しました。

仕事と幸福、そして人生について

仕事と幸福、そして人生について

昔なら、目の前にやらねばならない仕事があり「仕事の意義」などという哲学的なことを考える時間はなかった。だが、今は違う。誰もが、自分の職業を自分で作り出さねばならない時代だ。理由は、仕事が文字通り自分のビジネスになったからだ。誰もが自分の力で自分の仕事を作り出し、管理し、マーケティングを行い、維持していかなければならない時代になったのだ。

この「自分の職業を自分で作る」ということを考えると、自分の志向性に基づいた何らかの意思のもと、プライベートとかオフィシャルとか関係なく、ネットなどの「増幅装置」をフルに活用し、誰にも頼まれず「勝手にやる」ということの積み重ねが、結果として自分の仕事を作り上げ、Z会勝手広告作家がZ会のオフィシャル広告の依頼を受けたように、自分単独の力では到達できない場所まで自分を運んでくれるのではないかと思ったんですね。

これは仕事でも一緒ですよね。新規事業なんかは、「under the table」なんていう言葉もあるように、誰もが見捨てたプロジェクトをある思い入れの強い一人が「勝手に」継続開発していたものが元になって花開くというようなこともありますしね。

梅田望夫さんのブログと合わせて読むことにより、「誰にも頼まれていないことを、自分の意思を持って、勝手にやることの重要さ」そんなことを考えた高広伯彦さんのコラムでした。

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祝・梅田望夫さんブログ復活 〜「時代の力」と「時代の荒波」〜

4月に入り新年度を迎えましたが、うれしいことが2つありました。ひとつは先日のWBCで日本代表が優勝、今までに経験したことのない不信にあえいだイチローが最後の決勝で大仕事を成し遂げたこと(先日のエントリー 「イチローに見る生まれ変わるための死〜豊田泰光氏コラムより〜」で書いたことは杞憂に終わりましたね。。)。そしてもう一つは何といっても我が師匠梅田望夫さんの約半年ぶりのブログ復活。是非とも下記をご一読頂きたいのですが、これらのエントリーの中で今の経済状況下で我々はどう生きるべきなのかについての大きな示唆を梅田さんは与えて下さってます。

「自分の力と時代の力」講演録(JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009年3月21日)
この半年のこと、お知らせ、お詫び、諸々。
ドッグイヤーで生きること、そしてそのスローダウン

私が特にインスパイヤされたのは最初の「自分の力と時代の力」講演録。簡単に要約は難しいのですが。。試みるならば、こんな感じでしょうか。。

自分一人の力だけではたどり着くことができない場所に自分を運んでくれる「時代の力(世界経済の力、日本の力、自分が選んだ産業や得意領域の持つ力)」というものがが過去存在したんだが、この「時代の力」が段々と弱まっていて、「自分の力」で自分の未来を自分で切り開いていかないといけない時代になっている。ではあるが、インターネットに代表される「自分の力を増幅する装置」は依然と比べ物にならないほど充実しており、こんな時代だからこそ、この「増幅装置」をフル活用し、「自分への投資」を継続しなければいけない。

この講演録、また他の2つのエントリーを読ませて頂き、私が考えたことを書いてみようかなと思います。。

衰える「時代の力」と強まる「時代の波」

梅田さんがおっしゃる通り、私達を自力では不可能な場所まで誘ってくれる「時代の力」は急速に弱まっていることを最近特に痛感しています。と同時に、若干悲観的にはなってしまうんですが、私達を思いもよらない、また望んでもいない場所に運んでいってしまう「時代の荒波」が逆に急速に強まっているような気がしているのです。

これからの市場はどうなっていくのか

言うまでもなく、日本の市場は少子高齢化の流れでシュリンクしていくでしょう。市場規模に対し明らかに多すぎるプレーヤーの淘汰が現在既に進みつつあります。方や地球の人口は増加し続けるので、新興国を中心にグローバルに見れば市場は拡大するといえばその通りなのですが、現地企業の成長は目覚ましいものがあります(インドなんかが顕著ですね)ので、今後拡大する新興国市場への供給を担うのは現地企業が主流となるのではないでしょうか。ですので、日本企業は、世界市場拡大の恩恵を受けることができず、そのターゲット市場はどんどん縮小していくと見るべきかと考えています。

これからの雇用はどうなっていくのか

昨今の経済不況により、以前よりその傾向は高まってきたように思いますが、日本型経営の特徴であった年功序列、終身雇用はすでに崩壊の危機に瀕しています。ここは若干不透明ではありますが、今後は企業と労働組合・従業員が合意に達すれば、解雇を含む今までタブー視されていた打ち手が打てるようにどんどんなっていくように思います。既に今でも終身雇用とは言いながら55歳を超えると少数の「勝ち残り組」を省いては役職定年等厳しい雇用情勢にあるのが現状ではないでしょうか。

一方、高齢化社会に備えた「定年延長」の動きもあることは事実です。若年労働者が不足する中、60歳を超えた方の持てる力をフルに発揮して頂こうという考えですね。しかし私はこの「定年延長」は今後どうなるか予断を許さない状況だと思っています。

今でもそうですが、IT技術革新により単純作業のみならず、従来付加価値が高いとされてきた仕事までIT技術が担うような時代になってきています。今後益々IT技術革新が進む中、加えて世界市場拡大の恩恵を受けづらい将来の日本において、55歳以上の雇用がどれだけ存在するかはかなり疑問ではないかと思うのです。私の想像では、55歳以上の人々で仕事の争奪戦が今以上に激化し、相当ハイレベル且つ今までの経験に裏付けられた知識・技能を持った人以外は55歳以降仕事にありつけないという事態になるのではと思ってるんですね。

これからの生活はどうなっていくのか

そしたらこれから年を取っていく私達はどうなるのかということなんですが。。年金の問題がありますね。今もそうですが、徐々に支給開始年齢が引き上げられていくと予想すると、70歳までは年金がもらえないという事態も想定されますね。またこれも日本型経営の特徴でもある「退職金制度」、既に各企業の企業年金財政は火の車で、今と同じ退職金を未来永劫支払う能力はもう残っていないでしょう。労使が合意すれば、退職金制度を廃止することも可能になるのでは。先ほど述べたように、55歳以上で仕事に有りつくのが至難の業となれば、「55歳から70歳まで、仕事無し・年金無しで生きていかなければいけない」という最悪のケースも考えうるということなんですね。もしこの期間に病気でもしたらと思うと、収入が無い中支出が増えるわけですから、もう想像するだけで恐ろしい気がします。。

相当最悪ケースを書いてますし、細かい分析をすれば私の言っていることが間違っているかもしれませんが、これが今私が感じている危機感であり、自分が全く想定しない場所に運ばれて行ってしまう「時代の荒波」なんですね。梅田さんがおっしゃっている「時代の力」が弱まるのと同時に、この「時代の荒波」がどんどん強まっているのではないかと感じるのです。。

これからの「働き方」とは

「そしたらどうすればいいんだ!」ということなんですが、これはもう私も日々悩んでいるわけなんですよ。ただ色々事実と予想を重ね合わせてみると、「時代の荒波」に流されて最悪こういうケースに陥ることありうると考えて今を生きないといけないんだと思うんですよね。このことを梅田さんのエントリーで再認識したんですが、偶然同時期に読んでいた「仕事と幸福、そして、人生について」という本にヒントらしきものを見たのでご紹介してみたいのですが。。

仕事と幸福、そして人生について

仕事と幸福、そして人生について

昔なら、目の前にやらねばならない仕事があり「仕事の意義」などという哲学的なことを考える時間はなかった。だが、今は違う。誰もが、自分の職業を自分で作り出さねばならない時代だ。理由は、仕事が文字通り自分のビジネスになったからだ。誰もが自分の力で自分の仕事を作り出し、管理し、マーケティングを行い、維持していかなければならない時代になったのだ。また「独立」は、起業することだけを意味しない。あなたの行動すべてにかかわることだ。これからは、企業に勤めているか否かに関わらず、一人ひとりが独立した事業主であるべきだ。

梅田さんはこの講演録の中で梅田さんの名著(で私の座右の書)「ウェブ時代をゆく」の再読を促されているのですが、この中で「自分の志向性や専門性や人間関係を拠り所に「自分しか生み出せない価値を定義し、常に発信し続けることが重要(P103)」ということをおっしゃってます。これはまさしく「仕事と幸福、そして、人生について」のキーメッセージである「企業に勤めているか否かに関わらず、一人ひとりが独立した事業主であるべき」という思想と同じではないかと思うと同時に、我々に押し寄せる「時代の荒波」に立ち向かうときの我々の在り方ではなかろうかと思った次第でんですね。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

そんな厳しい時代を生き抜くには。。

確かに「時代の波」により、厳しい未来が想定されることは理解できた。そのためには独立した事業主でなければいけないことも分かった。だけどそんな悲観的な未来に向かってそのサバイバルだけを考えて生きていくのって何かしんどくないですか?と私なんかはどうしても思ってしまうんですね。。

そんな中この「時代の大きな荒波」に対しどう対峙していくかの思考のヒントとして、「ウェブ時代をゆく」のあとがきにこんな記述があったのでご紹介したいのですが。。

迷ったとき悩んだときには、時代の大きな流れに乗った新しいことにあえて巻き込まれてみる、そしてそこで試行錯誤を繰り返してはその先の可能性を探りだしていく。変化の激しい時代ならではのそんな生き方も、あんがい自由で楽しいものだ。(ウェブ時代をゆく P243より)

かのインテル創業者アンディーグローブが語った金言「Only the Paranoid Survive(病的なまでに心配性な人だけが生き残る)。この言葉を胸に、大きな「時代の大きな荒波」へのアンテナは研ぎ澄まし続けつつ、とは言いながら悲観的ではなくオプティミズムに満ちた精神状態で、一つの独立した事業主として「今何をしなければいけないのか」を考え続け、その結果時代の流れに適した「新しい自分」に変わっていくことを恐れず、むしろ楽しんでいくような「新しい強さ」を手に入れる。こんな思考が「時代の大きな荒波」を自分の見方につける生き方ではないかと改めて感じた、梅田さんの半年ぶりのエントリーでした。

私は梅田さんにお会いしたときも(梅田望夫さんにお会いすることができました!)ご本人に申し上げたのですが、梅田さんの著書はウェブの世界に限定した話を書かれているのではなくて、今起こっている世界の変化(ウェブというのはその変化の一つに過ぎない)に対し、どう私達がどう対峙していくかということが共通テーマであるということなんですね。この度梅田さんは将棋に関する本を書かれたとのことなのですが、この著書も将棋という「道具」を使って、梅田さん自身がこの混迷極める世界の行く先を警告する「カナリア」となって、我々にどう生き抜くべきかのヒントを与えてくださる著書になるのではないかと今から楽しみにしております。

梅田望夫さん。おかえりなさい!

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