恐るべし「ボルボ」を買収した男 〜吉利自動車 董事長 李書福〜

先日3月28日、中国の民間自動車メーカーの吉利自動車が、米フォードから高級車ブランド「ボルボ」を約1,600億円で買収するという発表がありました。最近本当に増えてきていますね、中国企業による欧米、日本企業買収。

この吉利自動車の創業者であり、現在の董事長(取締役会長)が今回ご紹介する李書福(リー・スーフー)氏、1963年生まれの47歳。この買収を報じた日経産業新聞にこの李書福さんの凄まじい今までの道のりが書かれておりました。まさに「中国パワー」を感じざるを得ないところでして、判りやすく箇条書きにしてみます。。


  • 高校卒業時(18歳) 親からの卒業祝い金、約1,300円を元手に中古カメラを購入し、写真スタジオを開設。
  • 1986年(23歳) その後廃家電から金属を回収する事業を経て、冷蔵庫部品メーカー「吉利」を設立。
  • 1989年(26歳) 冷蔵庫完成品製造を開始、製造業としてのノウハウを蓄積
  • 1994年(31歳) いきなり二輪車事業に参入。ブランド名「吉利ボーイング」と名乗り、本家米ボーイング社と喧嘩になる。
  • 1998年(35歳) 「庶民が変える車を作る」と宣言、小型自動車の量産を開始。参入時の名台詞「自動車製造は豚の飼育と同じぐらい簡単だ」
  • 1998年(35歳)〜2009年(46歳)
    • 約70万円以下の車を中心に地方都市で拡販。有力メーカーに名乗りを上げる。
    • 他社の模倣が多く、車両前頭部のマークがトヨタ自動車と似ていることから、トヨタとも法廷で争う。
    • 自動車会社の乱立で価格競争が激化、李董事長は過去の自分の発言を否定し、品質重視に方向転換。人材育成を重んじ、北京他に大学を4校設立。優秀者を国内8工場、海外3工場(ロシア・インドネシア)に送り込む。
    • ダイムラークライスラー(当時)の技術開発幹部 趙富全氏、英BPの財務担当幹部 ピーター・ジャン氏、伊フィアット幹部 沈暉氏やを引き抜き、品質向上、海外買収を進める。
  • 2010年(47歳) 米フォードから高級車ブランド「ボルボ」を1,600億円で買収。

最近書けていない「三十歳から四十五歳を無自覚に過ごすな」シリーズでも書いてみたいぐらいのすさまじくスピード感のある三十歳から四十五歳。最近日本の製造業の悲観論が多い中、こういう話を書くと「こんなアグレッシブな人は日本にはいない」とか、「だから日本の製造業は韓国や中国に負けるんだ」という話になり勝ちですが、私としては、「こういうアグレッシブな人と何か一緒にやることによって、自社も儲かり、吉利自動車も儲かるような何か新しいことができないかなー」なんて考えるべきではないかと最近思います。インドのタタ自動車の22万円カー「ナノ」のワイパー(一本しかない。。)は日本が誇る自動車部品メーカー・デンソーが手がけているというような事実もありますので。。

また、最近の日本での「韓国絶賛」について、韓国では戸惑いの声もあるようで、「もっと本音で批判し合えるパートナーになるべき」という声もあるようです。「パートナー」というのはこれからの日本の製造業のキーワードだなと最近感じています。

日本の「韓国企業に学べ」ブーム、韓国の反応は・・・(NIKKEI NET)

ちなみに吉利の2009年度の販売台数は約33万台、中国でのシェアが3.8%の第9位。吉利自動車入りした「ボルボ」が今後どうなるか。また吉利自動車が目標とする「譲世界充満吉利(世界を吉利で埋め尽くせ)」が実現するのか。今後も注目していきたいと思います。

ちょっと古いですが、吉利自動車の詳しい情報が載っています。

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