図解・ビジネスフレームワークのトリセツ 〜クロスSWOT分析〜

ビジネスシーンにおいて、フレームワークをお使いになるケースが多々あると思います。ですが、なかなか教科書どおりいかないということありませんか?私も色々使ったりしますが、正直なかなかうまくいかないんですね。。私も色々試行錯誤中ではありますが、何かの参考になればということで、私なりのフレームワークの使い方をちょこちょことご紹介してみたいと思います。第1回は非常にポピュラーなフレームワークであります「SWOT分析」で。。

SWOT分析は「クロスSWOT分析」で

SWOT分析は、外部環境を「機会」「脅威」で、内部環境を「強み」「弱み」で整理し、その企業が抱える問題・課題を明らかにするというフレームワークとしてよく使われております。以前は単に「機会」「脅威」「強み」「弱み」を並べるだけだったのですが、最近は「クロスSWOT分析」が当たり前のように使われております。ですので「SWOT分析」とは「クロスSWOT分析」であると考えるのが正しいと思います。

「クロスSWOT分析」とは、外部環境と内部環境の下記の4つの掛け算から、環境変化の現象だけを捉えるのではなく、問題・課題を深堀りして、SWOT分析の次のステップである「戦略の具体化」に向けてあるべき方向性を示すという、大きな役割を担っています。

  • 「機会」×「強み」⇒強化戦略:内部の強みを活かし、市場の機会を捉え更に伸ばす。
  • 「機会」×「弱み」⇒補完戦略:内部の弱みを補完し、市場の機会を捉える。
  • 「脅威」×「強み」⇒逆転戦略:内部の強みを活かし、市場の脅威に対抗し、逆転する。
  • 「脅威」×「弱み」⇒回避戦略:内部の弱みを解消し、市場の脅威の影響を最小限にする。

また最近は、外部環境の「脅威」を何らかの方法で「機会」に変える「転化戦略」という考え方も最近出てきており、クロスSWOT分析はより多面的に発展しつつあります(上記の図表の「機会」と「脅威」の間が「転化戦略」です)。

「機会・脅威・強み・弱み」は「漏れなく」「抜けなく」「ダブリなく」で

クロスSWOT分析を行う際に、いきなり図表1の最終完成図を準備し、「機会」「脅威」「強み」「弱み」を書き込んでいませんでしょうか?これはちょっと待って頂きたいところです。まずは「漏れなく」「抜けなく」「ダブリ無く」情報を抽出するために、エクセルで下記のような表を使い、「関係情報の棚卸」をやってから、「必要なエッセンス」を抽出したほうが、より良い分析になると思います。下記はあるポテトチップスのトップメーカーA社をイメージした「関係情報の棚卸」です。

その時、下記のような外部環境・内部環境を切る「切り口」を設定してから、関係情報を挙げていったほうが効果的です。この切り口には、「3C」「4P」「5F」「バリューチェーン」など、一般で良く使われるフレームワークを使うと「漏れ・抜け・ダブリ」解消に繋がります。その意味では、「クロスSWOT」は「色々なフレームワークの総本山」と言えるかもしれません。ただシチュエーションによりますので、下記の切り口を参考に、シチュエーションごとに切り口を変えて頂くのが良いと思います。ちなみに参考ですが、私は切り口の一覧表をエクセルで作成し手帳に貼り付けておりまして、「クロスSWOT」をやるときにこの一覧表を眺めて最適な切り口を選択しています。

[外部環境]

  • マクロ環境(社内、政治、経済の動きなど)とミクロ環境(業界、顧客、ライバルなど)
  • 3Cの「Customer(顧客)」「Competitor(ライバル)」
  • 5フォースの「同業他社」「新規参入者」「代替手段」「競合他社」「供給業者」

[内部環境]

  • ヒト、モノ、カネ、情報、時間
  • 3Cの「Company」
  • 4Pの「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(販売チャネル)」「Promotion(販売促進)」
  • バリューチェーン「調達⇒R&D⇒製造⇒販売⇒サービス」

「クロスSWOT」は細かい部分にこだわらず、「行ったり来たり作戦」で作り上げる

「クロスSWOT分析」をやり始めると、情報の分類で微妙なところがあり、「これは<強み>だろうか、<機会>だろうか」など悩み始めることが多々あります。ここで止まってしまうと、本来の目的である「戦略の方向性出し(強化・逆転・補完・回避・転化)」までなかなか行き着かないということが発生してしまいます。その場合は、クロスSWOTはひとまずしっくり行くほうに分類した上で、先に進めて一回最終形を作ってしまうことをおすすめします。

ひとまず「戦略の方向性出し」のステップまで行ってしまって、方向性をある程度作ってみた後にまた「クロスSWOT」に戻るという、「行ったり来たり作戦」で作り上げていったほうが絶対トータル時間が短く済むし、クオリティーも高くなると思います。先ほどの「関係情報の棚卸」からクロスSWOTに展開し、ポテトチップスメーカーA社の戦略の方向性を出してみたのが下記になりますが如何でしょうか。。


上級者は「戦略の方向性」から逆算でクロスSWOTを作る

また、これは上級者向けかもしれないですが、「戦略の方向性⇒クロスSWOT」と逆で進めるやり方も有効です。つまり、ある程度外部・内部環境を理解した段階で、そこから「クロスSWOT」には行かずいきなり「戦略の方向性の仮説」をつくり、その仮説が正しいことを証明するために「クロスSWOT」を作成し、正しくない場合は仮説を修正するという「行ったり来たり作戦」で作り上げていくやり方です。

ただし、この時も先ほど申し上げた、機会・脅威・強み・弱みは「漏れなく、抜けなく、ダブリなく」は重要です。「戦略の仮説」と関係がある情報だけでの検証は間違った方向に行ってしまう危険性がありますので、「関係情報の棚卸」をおろそかにせず、「漏れ・抜け・ダブリのない情報」での検証はしっかりとやりましょう。

また、「クロスSWOT分析」は、あくまで戦略の方向性を出す「ツール」に過ぎないので、上級者は「クロスSWOT」の図表などは見せずに、戦略の方向性をズバリ言って、さっさと戦略の具体的な内容に踏み込んでいきます。クロスSWOTは戦略の方向性を導くためのプロセスであり、そのプロセスは尋ねられたら見せればいいのであって、尋ねられなければ見せる必要はなく、プレゼン資料でも本編ではなく参考資料レベルでつけておくのが適切であることを覚えておいて頂きたいと思います。

クロスSWOTの図表をばーんとプレゼンの中で派手にご披露したいという気持ちはわかるのですが、クロスSWOT分析自体が「目的」となってしまっては本末転倒になってしまいます。あくまでクロスSWOTは戦略の方向性を導くための手段。ここを取り違えないように気をつけましょう。

従来SWOT分析は環境変化を整理し、問題点・課題を明らかにするフレームワークとして使われてきましたが、「クロスSWOT分析」に発展させることにより、「戦略づくり」にまで使っていくことができる強力なフレームワークです。腕を磨くためにはやはり「場数」を含むことが一番。是非どんどん使って頂きたいと思います。


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