祝・梅田望夫さんブログ復活 〜「時代の力」と「時代の荒波」〜

4月に入り新年度を迎えましたが、うれしいことが2つありました。ひとつは先日のWBCで日本代表が優勝、今までに経験したことのない不信にあえいだイチローが最後の決勝で大仕事を成し遂げたこと(先日のエントリー 「イチローに見る生まれ変わるための死〜豊田泰光氏コラムより〜」で書いたことは杞憂に終わりましたね。。)。そしてもう一つは何といっても我が師匠梅田望夫さんの約半年ぶりのブログ復活。是非とも下記をご一読頂きたいのですが、これらのエントリーの中で今の経済状況下で我々はどう生きるべきなのかについての大きな示唆を梅田さんは与えて下さってます。

「自分の力と時代の力」講演録(JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009年3月21日)
この半年のこと、お知らせ、お詫び、諸々。
ドッグイヤーで生きること、そしてそのスローダウン

私が特にインスパイヤされたのは最初の「自分の力と時代の力」講演録。簡単に要約は難しいのですが。。試みるならば、こんな感じでしょうか。。

自分一人の力だけではたどり着くことができない場所に自分を運んでくれる「時代の力(世界経済の力、日本の力、自分が選んだ産業や得意領域の持つ力)」というものがが過去存在したんだが、この「時代の力」が段々と弱まっていて、「自分の力」で自分の未来を自分で切り開いていかないといけない時代になっている。ではあるが、インターネットに代表される「自分の力を増幅する装置」は依然と比べ物にならないほど充実しており、こんな時代だからこそ、この「増幅装置」をフル活用し、「自分への投資」を継続しなければいけない。

この講演録、また他の2つのエントリーを読ませて頂き、私が考えたことを書いてみようかなと思います。。

衰える「時代の力」と強まる「時代の波」

梅田さんがおっしゃる通り、私達を自力では不可能な場所まで誘ってくれる「時代の力」は急速に弱まっていることを最近特に痛感しています。と同時に、若干悲観的にはなってしまうんですが、私達を思いもよらない、また望んでもいない場所に運んでいってしまう「時代の荒波」が逆に急速に強まっているような気がしているのです。

これからの市場はどうなっていくのか

言うまでもなく、日本の市場は少子高齢化の流れでシュリンクしていくでしょう。市場規模に対し明らかに多すぎるプレーヤーの淘汰が現在既に進みつつあります。方や地球の人口は増加し続けるので、新興国を中心にグローバルに見れば市場は拡大するといえばその通りなのですが、現地企業の成長は目覚ましいものがあります(インドなんかが顕著ですね)ので、今後拡大する新興国市場への供給を担うのは現地企業が主流となるのではないでしょうか。ですので、日本企業は、世界市場拡大の恩恵を受けることができず、そのターゲット市場はどんどん縮小していくと見るべきかと考えています。

これからの雇用はどうなっていくのか

昨今の経済不況により、以前よりその傾向は高まってきたように思いますが、日本型経営の特徴であった年功序列、終身雇用はすでに崩壊の危機に瀕しています。ここは若干不透明ではありますが、今後は企業と労働組合・従業員が合意に達すれば、解雇を含む今までタブー視されていた打ち手が打てるようにどんどんなっていくように思います。既に今でも終身雇用とは言いながら55歳を超えると少数の「勝ち残り組」を省いては役職定年等厳しい雇用情勢にあるのが現状ではないでしょうか。

一方、高齢化社会に備えた「定年延長」の動きもあることは事実です。若年労働者が不足する中、60歳を超えた方の持てる力をフルに発揮して頂こうという考えですね。しかし私はこの「定年延長」は今後どうなるか予断を許さない状況だと思っています。

今でもそうですが、IT技術革新により単純作業のみならず、従来付加価値が高いとされてきた仕事までIT技術が担うような時代になってきています。今後益々IT技術革新が進む中、加えて世界市場拡大の恩恵を受けづらい将来の日本において、55歳以上の雇用がどれだけ存在するかはかなり疑問ではないかと思うのです。私の想像では、55歳以上の人々で仕事の争奪戦が今以上に激化し、相当ハイレベル且つ今までの経験に裏付けられた知識・技能を持った人以外は55歳以降仕事にありつけないという事態になるのではと思ってるんですね。

これからの生活はどうなっていくのか

そしたらこれから年を取っていく私達はどうなるのかということなんですが。。年金の問題がありますね。今もそうですが、徐々に支給開始年齢が引き上げられていくと予想すると、70歳までは年金がもらえないという事態も想定されますね。またこれも日本型経営の特徴でもある「退職金制度」、既に各企業の企業年金財政は火の車で、今と同じ退職金を未来永劫支払う能力はもう残っていないでしょう。労使が合意すれば、退職金制度を廃止することも可能になるのでは。先ほど述べたように、55歳以上で仕事に有りつくのが至難の業となれば、「55歳から70歳まで、仕事無し・年金無しで生きていかなければいけない」という最悪のケースも考えうるということなんですね。もしこの期間に病気でもしたらと思うと、収入が無い中支出が増えるわけですから、もう想像するだけで恐ろしい気がします。。

相当最悪ケースを書いてますし、細かい分析をすれば私の言っていることが間違っているかもしれませんが、これが今私が感じている危機感であり、自分が全く想定しない場所に運ばれて行ってしまう「時代の荒波」なんですね。梅田さんがおっしゃっている「時代の力」が弱まるのと同時に、この「時代の荒波」がどんどん強まっているのではないかと感じるのです。。

これからの「働き方」とは

「そしたらどうすればいいんだ!」ということなんですが、これはもう私も日々悩んでいるわけなんですよ。ただ色々事実と予想を重ね合わせてみると、「時代の荒波」に流されて最悪こういうケースに陥ることありうると考えて今を生きないといけないんだと思うんですよね。このことを梅田さんのエントリーで再認識したんですが、偶然同時期に読んでいた「仕事と幸福、そして、人生について」という本にヒントらしきものを見たのでご紹介してみたいのですが。。

仕事と幸福、そして人生について

仕事と幸福、そして人生について

昔なら、目の前にやらねばならない仕事があり「仕事の意義」などという哲学的なことを考える時間はなかった。だが、今は違う。誰もが、自分の職業を自分で作り出さねばならない時代だ。理由は、仕事が文字通り自分のビジネスになったからだ。誰もが自分の力で自分の仕事を作り出し、管理し、マーケティングを行い、維持していかなければならない時代になったのだ。また「独立」は、起業することだけを意味しない。あなたの行動すべてにかかわることだ。これからは、企業に勤めているか否かに関わらず、一人ひとりが独立した事業主であるべきだ。

梅田さんはこの講演録の中で梅田さんの名著(で私の座右の書)「ウェブ時代をゆく」の再読を促されているのですが、この中で「自分の志向性や専門性や人間関係を拠り所に「自分しか生み出せない価値を定義し、常に発信し続けることが重要(P103)」ということをおっしゃってます。これはまさしく「仕事と幸福、そして、人生について」のキーメッセージである「企業に勤めているか否かに関わらず、一人ひとりが独立した事業主であるべき」という思想と同じではないかと思うと同時に、我々に押し寄せる「時代の荒波」に立ち向かうときの我々の在り方ではなかろうかと思った次第でんですね。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

そんな厳しい時代を生き抜くには。。

確かに「時代の波」により、厳しい未来が想定されることは理解できた。そのためには独立した事業主でなければいけないことも分かった。だけどそんな悲観的な未来に向かってそのサバイバルだけを考えて生きていくのって何かしんどくないですか?と私なんかはどうしても思ってしまうんですね。。

そんな中この「時代の大きな荒波」に対しどう対峙していくかの思考のヒントとして、「ウェブ時代をゆく」のあとがきにこんな記述があったのでご紹介したいのですが。。

迷ったとき悩んだときには、時代の大きな流れに乗った新しいことにあえて巻き込まれてみる、そしてそこで試行錯誤を繰り返してはその先の可能性を探りだしていく。変化の激しい時代ならではのそんな生き方も、あんがい自由で楽しいものだ。(ウェブ時代をゆく P243より)

かのインテル創業者アンディーグローブが語った金言「Only the Paranoid Survive(病的なまでに心配性な人だけが生き残る)。この言葉を胸に、大きな「時代の大きな荒波」へのアンテナは研ぎ澄まし続けつつ、とは言いながら悲観的ではなくオプティミズムに満ちた精神状態で、一つの独立した事業主として「今何をしなければいけないのか」を考え続け、その結果時代の流れに適した「新しい自分」に変わっていくことを恐れず、むしろ楽しんでいくような「新しい強さ」を手に入れる。こんな思考が「時代の大きな荒波」を自分の見方につける生き方ではないかと改めて感じた、梅田さんの半年ぶりのエントリーでした。

私は梅田さんにお会いしたときも(梅田望夫さんにお会いすることができました!)ご本人に申し上げたのですが、梅田さんの著書はウェブの世界に限定した話を書かれているのではなくて、今起こっている世界の変化(ウェブというのはその変化の一つに過ぎない)に対し、どう私達がどう対峙していくかということが共通テーマであるということなんですね。この度梅田さんは将棋に関する本を書かれたとのことなのですが、この著書も将棋という「道具」を使って、梅田さん自身がこの混迷極める世界の行く先を警告する「カナリア」となって、我々にどう生き抜くべきかのヒントを与えてくださる著書になるのではないかと今から楽しみにしております。

梅田望夫さん。おかえりなさい!

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