イチローに見る「生まれ変わるための死」〜豊田泰光氏コラムより〜

皆さん豊田泰光さんという野球評論家をご存知でしょうか。現役時代は西鉄黄金時代を支えた名打者で、現在は野球評論家として、いや野球評論家の域を超えた素晴らしい発想力と文章力で球界を切るOne and Onlyな方であります。

豊田さんは、日本経済新聞朝刊スポーツ面で定期的に「チェンジアップ」というコラムを手がけられています。私はこのコラムが大好きでいつも拝読しているのですが、先日3月5日(木)の朝刊に掲載されたコラムが出色の出来で、かつ強烈に胸に残るメッセージを私に残してくれました。是非皆様にもご紹介させて頂きたいと思います。

今回のテーマは3月5日に開幕したWBCにおけるイチローの不振について。強化試合6試合で打率1割3分。イチローレベルまで行ってしまうと誰も何も言ってくれない(言えない。。)ので、イチローしか経験できない「孤独」がそこにあると豊田さんは語っています。

そんなイチローを豊田さんは別の見方もしていて、その視点が私の心の奥深くに残りました。

野球にはいろいろな見方があり、現在のスランプを老化ではなく、一つの死なのだと見ることもできるだろう。新しいイチローに生まれ変わる過程としての死。(中略)打者というものは小さな死と再生を繰り返しながら、大きくなっていく。イチローほどの打者でも、そうした打者の普遍の心理に従わざるを得ない。野球はやはり深い。
日本経済新聞 3月5日朝刊 スポーツ面 豊田泰光「チェンジアップ」)

新しく生まれ変わるための「死」。これは野球に限ったことではないと私は思います。イチローは「野球バカ一代」を突き進むことにより、極限まで達して「死」を向かえ、苦悩しまた「再生」するというサイクルを繰り返しながら、張本勲氏の日本記録3085安打にあと2本の日米通算3083安打まで辿り着いたんだと思います。

これを私に置き換え、果たして私は今まで「死」を迎えるほど、何かを突き詰めたことがあるだろうかと自問自答したのですが。。。

このコラムを読んで、女子マラソン野口みずき選手のことを思い出しました。ダントツの強さで北京五輪の代表に選ばれたんですが、けがで本番に出場できなかったことを。このように、残念ながらとてつもない努力を重ねたにも関わらず、その目標は達成されなかったということがどうしても起こってしまいます。その時にもし「これは生まれ変わるための死である」と捉える事が出来たら、目標を達成できなかった事実を受け止め、また前を向いて歩けるのではないかとも思いました。

人間が本当にいつか死んでいくわけですが、その人の人生は「いかに生きながら死ぬ経験を重ねたか」によって輝くのだろうと、豊田さんのコラムを拝読し思った次第です。

昨日の中国戦でもイチローは5打数0安打とやはり結果が出ておりません。もしこのまま結果が出ず、日本がWBCチャンピオンになれなかった場合、イチローには厳しい試練がまっていると思います(当たり前ですが、私もそんなことを望んでいるわけではないですよ。。)但し、仮にそうなったとしても、それは「新しいイチローに生まれ変わるための死」であり、その試練を乗り越え、必ず再生し、また誰も見たことのない境地を我々にも見せてくれるはずだと、豊田さんの渾身のコラムを読み、強く思いました。

私はイチローが「50歳まで現役でやりたい」と言っていたことが大変印象に残っています。イチローは必ずやってくれると思っていますし、私は心より応援しています。

全文掲載が出来ないので部分引用で恐縮ですが、是非ご自宅や会社で3月5日(木)の日本経済新聞朝刊を探し出して読んで頂きたい、豊田さんの野球への、そしてイチローへの愛に満ちた素晴らしいコラムでした。

いかがでしたか?もし「おもろい!」と思われたらクリックをお願いします!


にほんブログ村 経営ブログへ