男性用ブラジャーは「Wii」以上のブルーオーシャン戦略成功例か?

この年末、テレビ・雑誌で「変なもの」を良く見かけませんでしたか?以前より話題になっていたようなんですが、恥ずかしながら私は未チェックで、年末の深夜番組でのこんな紹介で初めて知りました。

サラリーマンの40〜50%は男性用ブラジャーを愛用している。彼らのことを「ブラリーマン」と呼ぶ。

男性用ブラジャーは、楽天市場に出店中の下着専門店「ウィッシュルーム」が、「どうしてメンズブラはないの?」という素朴な疑問からスタートし商品化。価格2,800円で発売後3週間で500個を完売。先ほどHPを確認したら、約2/3は品切れのようです。。

下着専門店「ウィッシュルーム」のHP

意外にも、あなたに大目玉を食らわしている怖〜い上司も、男性用ブラジャーを着けているかもしれません。

私はまだ愛用していないのですが、それ以来男性用ブラジャーのことが頭から離れず、男性用ブラジャーについて色んなことを考えている中で、「実は男性用ブラジャーって究極のブルーオーシャン戦略ちゃうの」と思っていたところ、ネットでも同じような論調があった「男性向けブラジャーはブルーオーシャンなのか?(日経ビジネスオンライン)」ので、一つ整理してみようと思い、今回のエントリーに至っております。

ブルーオーシャン戦略とは何か

フランスとシンガポールにあるビジネススクールINSEADの教授、W・チャン・キムとレボ・モボルニュの2005年発表の著書「ブルーオーシャン戦略」で紹介した新しい戦略論で、当時反響を呼びました。

市場シェアの獲得のために、熾烈な価格、機能、品質競争を強いられる既存市場=「レッド・オーシャン(血の海)」での競争を回避するために、今一度商品/サービスをゼロベースで見直し、既存の商品/サービスに対し「取り除く・減らす・増やす・加える」を行い、新しい定義を与えることにより、競争相手が一人もいない新しい市場=「ブルー・オーシャン(青い海)」を目指す。簡単に言いますとこれが「ブルー・オーシャン戦略」であります。

今までマイケル・ポーターに代表される競争戦略論で言われていた、「競争に勝つためには、低価格化か、差別化(高付加価値化)かを選択する必要がある」と言われていましたが、ブルーオーシャン戦略との関連の中、下記のマトリックスのように「低コストと高付加価値を両立する」新しい方向が提示され、最近「スマート・リーン戦略」と呼ばれています。

このブルーオーシャン戦略、スマート・リーン戦略の成功事例の一つとして、任天堂の「Wii」が良く取り上げられているわけですね。

Wiiは「ブルーオーシャン戦略」の成功例

そこでWiiのケースですが、任天堂ニンテンドーゲームキューブソニープレイステーション2で後塵を拝していたとき、最先端のグラフィック技術を核とするプレイステーション2との正面衝突を「レッド・オーシャン」と捉え、レッド・オーシャンでのガチンコ勝負を避け、今までゲームに縁の無かった女性、中高年=「ブルー・オーシャン」を切り開こうとしたのがWiiブルーオーシャン戦略である、という考えです。

その際、下記の「戦略キャンバス」というツールを使い、「ブルーオーシャン」にいる新しいターゲット顧客=女性・中高年にとって「不要」な機能を取り除き、その代わり「わかりやすさ」とか「親しみやすさ」などの新しい付加価値を加えることにより、「ゲーム機の再定義」を行ったんですね。その後のWiiの成功は皆さんご存知の通りです。

男性用ブラジャーをブルーオーシャン戦略として分析すると。。

ここで、ブラジャーをこの「戦略キャンパス」を使って考えてみたいんです。昨今、女性向けブラジャーの世界では、美しいバストラインを実現するための「寄せて上げる」戦争があり、ここが開発費用、製造コスト上昇の要因となりながら、ライバルとの極めて激しい競争を余儀なくされる「レッド・オーシャン」であるわけです。

しかし、こと男性用を考えてみると、「寄せて上げる」必要がない。そもそも「寄せてあげる」ものがない。ここで、男性顧客にとって不必要な機能というものが出てきます。つまり、「寄せて上げる」機能を取り除くことにより、低コスト化が可能となるわけですね。

また、女性向けブラジャーの世界ではデザイン性についての競争も激しい。そしたらデザイン性はどうか。男性用ブラジャーではデザイン性を取り除くことができるのか。残念ながらデザイン性は不必要とは言えそうにありません。男性はブラジャーに「癒し」だとか、「やさしさ」を求めています。癒し、やさしさとは、その肌触りなど機能面もさることながら、美しい装飾、デザインとの合わせ技で生まれるもの。ですので、女性用とまでは言いませんが、デザイン性は男性用ブラジャーにとっても手を抜けない、抜いてはいけない部分だと思います。

これを戦略キャンバスで書いてみると、下記のような感じでしょうか。

こう見ていきますと、男性用ブラジャーというのは、今までブラジャーに縁の無かった「男性」という全く新しい顧客=ブルーオーシャンを開拓し、更に女性向け同様の付け心地、デザイン性は維持しながらも、大きなコストアップ要因であった「寄せて上げる」機能を大胆に取り除くことにより、ブラジャーという製品に新しい定義を与え、低コストと高付加価値を同時に実現する、Wiiにも負けずと劣らない、日本を代表するブルーオーシャン戦略の成功モデルである、そして世界に広く紹介されるべきモデルであるのだ、と言えると思うんですね。

参入企業が少なく、また競争が激しくない。加えて価格はそれほど下げていないところからすると、低コストで生産可能と想像される男性用ブラジャーの利益率は相当高いはず。

今後の男性用ブラジャーを巡る動き

今後の注目すべき点。それは下着業界のガリバー・ワコール、業界の風雲児トリンプ、また「ブラカップ付きキャミソール」で下着業界を席巻したユニクロの動き。こういったビッグネームがこの男性用ブラジャー市場に参入するか。もし参入するとしたら、どんな手を売ってくるか。

女性下着売り場の一角に男性用下着売り場が出来るのか。それを買いに来た男性はやはりその店で試着するのか。その試着した男性を見た女性販売員はやはり「お似合いですね」なんと言うのか。ユニクロの店頭が男性用ブラジャーで山積みとなるのか。また、ユニクロに対抗し、しまむらなどの実用衣料メーカーチェーン、イトーヨーカドーなどの大手スーパーマーケットチェーンの店頭を男性用ブラジャーが飾る日はやってくるのか。。

ただ私が思うに、男性用ブラジャーのブルーオーシャン戦略は更なる改善余地を残しているのではないでしょうか。

男性用ブラジャーは、ブルーオーシャン戦略の肝である「除去・減少・増加・創造」について、「除去・減少」による低コスト化はなされていると思うのですが、「増加・創造」による新しい付加価値が生まれていない点が、今後の更なる発展予知を残しているのではないかと私は考えます。

男性の思いを実現し、悩みを解決するブラジャー。

例えば「スポーツブラ」的なアプローチ。スポーツウェアメーカーのビッグネームが市場に参入、アスリートの能力を極限まで引き上げる男性用スポーツブラが登場。イチローが男性用スポーツブラ着用で前人未到の4000本安打を達成し、市場初の「50歳200本安打」を達成する日が来るのか。サッカー日本代表が男性用スポーツブラを着用、悲願のワールドカップベスト4入りを決め、あまりの喚起に選手全員がユニフォームを脱ぎ捨て、その下には全員おそろいの男性用スポーツブラという時代がやってくるか。

また「加齢臭撃退ブラ」はどうでしょう。加齢臭の原因である不飽和アルデヒドの2−ノネナールを抑えるミョウバン溶液がブラジャーの中に含まれており、これがノナネール発生を抑制する。加えて体の一部を若干締め付けることにより、ノナネールを発生させる体内細胞の運動を抑制、加齢臭の根本的な解決に寄与する。そんな医療用ブラジャーが登場するか。

いずれにせよ、ブルーオーシャン戦略の考え方を使い、男性向けのものを女性にも、逆に女性向けのものを男性にもという大胆な発想は、あなたに今までに無い斬新な新製品・新規事業開発の機会を与え、今まで誰も見たことの無いブルーオーシャンへといざなってくれることでしょう。

あなたが何か袋小路に入ってしまったとき、この「男性用ブラジャー」を思い出し、思考の広がりを遮る壁を取り払ってしまいましょう。


いかがでしたか?もし「おもろい!」と思われたらクリックをお願いします!


にほんブログ村 経営ブログへ