恩師の死が教えてくれたこと

先日、本当に悲しいことを知りました。私の恩師の死です。まだ全然若いのに。。

その恩師というのは、私がYゼミナール(予備校ですね)に通っていたときの英語のM先生です。この人と出会うことがなかったら、今の私はないと断言できます。

現役の大学受験でことごとく惨敗を喫し、「勉強もしてないんだから自業自得やない」かと思いつつもそれなりに傷つき、ある意味何の希望もなくYゼミナールの門を叩きました。そこで出会ったのがM先生、そしてM先生の最初の授業。

まず、「なぜ英語を学ぶのか」という問いをするわけです、私達に。普通は「大学に合格するため」という話になりますわね。けど、M先生は「それは違う」とおっしゃる。そして

「君たちが英語を学ぶ理由は、コミュニケーション能力を身につけ、より人間として成長するためだ」
とおっしゃる。その時の「眼力」はすごいものがありましたね。今も覚えています。

文字にするとそんなにたいしたことではないかもしれないんですが、その時、何に感動したかというと、目先の目標である「大学合格」ではなくて、もっと難しく、より本質的な「人間の成長」という目標に生徒を向かわせることにより、その過程で結果として大学に合格している、そして大学に合格した後も勉強を続けなさい、というすごく本質的な話をしてくださったことです。目から鱗でした。。。

文字にすると単純な話ではあるのですが、一枚のチャートにすると、その目指すところのスケール感の違いが伝わるでしょうか。


その時M先生は、具体的な目標として、大学合格ではなく「英検2級or準1級合格」をとおっしゃり、そのための勉強方法として、

  1.単語帳の丸暗記はやめろ、意味なし
  2.英文は頭から読め(直読)
  3.英文は声に出して読め(音読)

を提示され、私は徹底してこの指導を受けました。英語の成績は本当に伸びましたね。自分でもびっくりするぐらい。先生が最後の授業で、ギターの弾き語りでビリージョエルを歌ってくれたことを今でも思い出します。そして、現役時代には絶対ありえない大学に合格することができました。

それから15年ほど経過し、そのことを懐かしく思い出し、「あっ。そういえば今はネットがあるから、M先生どうしてるかわかるかも。やっぱすごいな。ネットは!」と小躍りし、ネットで調べたんですね。Googleで「M先生」って入れてね。ネットでM先生に会えるって思いましたね。

検索の結果。。。。。

私は愕然としました。先生はお亡くなりになっていた。しかも、自殺。。。
今考えると、確かにM先生は歯に衣を着せぬ言動の方でしたが、どことなく寂しさを感じさせる方でした。が、なぜ自殺を。。。

ネットによると、長い間、病気をされていたそうです。本当に残念です。断腸の思いです。

私は、今回の出来事に際し、2つのことを考えました。

1つは、「やっぱりネットは素晴らしい」ということ。
ネットはもう今は会えないかもしれない人とつないでくれる、そして少しの時間かもしれないけど、あの時に戻って、その時に教わったことを思い出し、それを今の自分のシチュエーションに置いてみて、改めてその意味を考えてみる。そして改めてその人に感謝をする。そういうとてもhuman touchな経験・時間を提供してくれるんですね。ネットって。

もう一つは、「なぜやるか」という問いをおろそかにしてはいけない。目先の視点ではなく、もっと「本質的」な部分を考えないといけない、ということ。
それを考えると、梅田望夫さんが著書「ウェブ時代 5つの定理」の中にあるこの2つの言葉が、M先生のメッセージに近いのかなと思いました。

シリコンバレーの存在理由は「世界を変える」こと。
「世界を良い方向へ変える」ことだ。
そしてそれをやり遂げれば、
経済的にも信じられないほどの成功を手にできる。── スティーブ・ジョブズ

私たちは、グーグルを「世界をより良い場所にするための機関」
にしたいと切望している。── ラリー・ページ

自分自身が「なぜこれをやるか」についてもっと本質に迫るということも大事です。が、それ以上に、皆さんが部下を持ち、部下を指導する際に、「なぜこれをやるか」という問いに対し、目先視点のみで答えていないか、もっと本質的なところまで考え抜けているか、それが部下にも伝わっているか、一度冷静に考えてみるのもいいかも知れませんね。

これって、口で言うのは簡単ですが、本当に難しいです。本当に難しいです。。

M先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

M先生、本当に有難う。ネットのおかげで先生にもう一度お会いすることができました。


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