私が考えるプレゼンを良いものにする「6つの誓い」
私もしばしばプレゼンをさせて頂く機会を頂いたり、またプレゼンを聞かせて頂く機会があったりしますが、まぁプレゼンというのは千差万別と言いますか、プレゼンターによって全然違いますね。その人の個性が出てそれはそれで面白いのですが、プレゼンの目的である「何かを伝える」に立ち返ると、行き当たりばったりではなく、何らかの自分なりの「プレゼンセオリー」を持っておく必要があるなといつも感じています。
今回は色んな「師匠」に教わりながら、私なりにいつも意識してプレゼンに取り組んでいる「6つの誓い」をご紹介したいなと思います。一部「それは違うんとちゃうの」というご指摘もあろうかと思いますが。。。
- 「しゃべりはプレゼン資料と一致させる」と固く誓う
- 「プレゼン資料は事前に配り、出し惜しみしない」と固く誓う
- 「資料のレイアウトはワンパターンを貫く」と固く誓う
- 「使う色は自分が使い慣れた3色まで」と固く誓う
- 「文字の羅列は死んでもやらない」と固く誓う
- 「成功したプレゼンは骨の髄まで使いまわす」と固く誓う
1.「しゃべりはプレゼン資料と一致させる」と固く誓う
一般的に、「プレゼン資料を読むだけのプレゼンは駄目」とされますが、私はあえてしゃべりと資料を一致させるよう気をつけておりまして、概ね成功しています。
プレゼンというのは時間制限があるのが常。その限られた時間で正確に印象深くメッセージを使えるためには、聴衆が、「視覚で認識するメッセージ」と「聴覚で認識するメッセージ」を一致させたほうが効果的というのが私の考えです。下記の資料を使って説明しますと。。
- まず最初にトップのタイトルの部分を「ではデジタルスチルカメラの生産台数の推移を見てみましょう」で始まり、
- 次にタイトル下の部分の1行目「(日経マーケットアクセスのデータによりますと)2008年の生産台数は1億3,998万台、対前年成長率は11.4%と2007年より16.8%のダウンの見込みとなっております。」と読み上げ、
- そして2行目「(全体の推移を見ますと)2004年まで高い成長率で拡大しましたが、2005年以降成長が鈍化、2008年以降は一桁成長に留まり、市場拡大にブレーキがかかる見込みです。」と読み上げます。
こうやって、私は上から下へと、しゃべりとプレゼン資料を一致させるようにしています。特にグラフの場合は、いきなりグラフを見てもそこから何が読み取れるかわからないもの。「グラフの解釈を聴衆に押し付けない」ことが重要だと思っています。
また、しゃべりとプレゼン資料を一致させようと意識すると、必然的に準備の段階で「このシートで言わないといけないことは何か」を考えざるを得なくなり、「メッセージの無い無意味なシート」を作ることを防止したり、「このデータ(メッセージ)ではちょっと弱いな」と更にデータ(メッセージ)を探したりするようになり、各シートのメッセージ性が高まっていくことを実感しています。「So What?(だから何?)」という突っ込みの事前防止が可能となるわけです。
2.「プレゼン資料は事前に配り、出し惜しみしない」と固く誓う
よくプレゼンのテクニックの一つとして、「資料を事前に配ると、聴衆は資料が手元にあることで安心しちゃってあまり聞かなくなるから、資料を事前に配ってはいけない」ということが言われたりします。これは「発表者のエゴ以外の何者でもない」と私は思っています。
プレゼン中に聴衆が眠りに入ってしまうようなプレゼンは、資料を事前に配ろうが、配らなかろうが、結果は同じではないでしょうか。プレゼンターは、「プレゼンを聴くのか、聴かないのかのボールは聴衆が握っているんだ」ということを忘れてはいけないと思います。
また、ここまで情報が氾濫する現代社会。プレゼンを印象に残るものにするためには、「情報のワンストップ化」が重要。事前にお配りした資料の隅にメモ書きをして頂いたり、アンダーラインを引いて頂いたり、目一杯配布資料を「汚して頂く」ことにより、聴衆の頭への定着度も増しますし、あとで資料を振り返る時も、記憶の蘇りがより良くなると思います。
また、プレゼン資料はいくら大写しにしても見えないときも多々あります。そんな時手元にあれば容易に確認できます。懐の小さい「出し惜しみ」はやめて、資料は事前配布とされては如何でしょうか。
3.「資料のレイアウトはワンパターンを貫く」と固く誓う
腕の良い料理人は、一本の包丁を大切に愛でながら使い、その一本で素晴らしい料理を数多く作り、お客様を魅了するといいます。これは「ビジネスの料理人」であるプレゼンターにも全く同じことが言えると思います。
名プレゼンターは自分の大切な「キラーレイアウト(フォーマット)」を持っているものです。このキラーレイアウトをどんな資料の時も使い、そして改良/改善し、より良いレイアウトに仕上げながら、素晴らしいプレゼンで聴衆を魅了する。
プレゼン資料のレイアウトは自分がまとめやすい、しゃべりやすい「ワンパターン」を貫くべきだというのが私の考えです。下記が私のキラーフォーマットなのですが。。。
まず、タイトルを青字、文字サイズ28ポイントで。その下はそのシートで言いたいメッセージを文字サイズ16ポイント、読みやすいように行間の数値も固定。メッセージは2つのメッセージまで、全体で3行を超えないことを自分に課しています。これでこのシートのメッセージを全て作り上げる。
そしてルーラーを使いながら、タイトル/メッセージの配置/整列はページ間で統一。聴衆がプレゼンの間、同じ目の動きでプレゼンを追えるようにします。
そしてその下に上段のメッセージの根拠となる数字、図表を配置。このスペースは、(1)一つの図表で目一杯使う場合、(2)二つに割って2つの図表を使う場合、の2パターンで考えています。
また、特別に言いたいことがある「パワーシート」については、タイトル、その下のメッセージでネタ振りをしておいて、最下段でバシッと決めるというフォーマットも使ったり。
また、私は「プレゼン資料には適度な余白が不可欠」と思っておりまして、事前に「余白部分」を決めており、ここには「死んでも何も入れない」と堅く心に誓っております。
プレゼン資料最外周に適度な余白を入れますと、非常にすっきりした印象になります。逆に最外周ぎりぎりまでコンテンツを詰め込みますと、非常にBusyな印象となってしまいますね。これを心がけるだけでも、印象の良い、目に優しいプレゼン資料に仕上がると思います。
こんな感じでどうでしょうか。。
こういう風にレイアウト=「見た目」を事前に決めてしまいますと、「どうまとめようか・・・」というゼロからのスタートにならずに済み、メッセージ、全体の流れなど「中身」の検討により時間を割けることになり、プレゼンの質がより向上すると思っています。
4.「使う色は自分が使い慣れた3色まで」と固く誓う
プレゼン資料作っている時、色で悩むことも多いと思います。色はその単独の色だけでなく、組み合わせで印象ががらっと変わってしまうため、色々考えて色を選んだものの、やってみたらすごいグロテスク、「お前絵のセンス無いな」と上司が一言。。なんてことありませんでしょうか。
私は色も先ほどのレイアウトの話でしました「良い料理人は一本の包丁でお客を酔わす」と同じだと考えており、「お気に入りの3色をどんなときでも使いまわす」を基本的な考え方としています。先日のエントリー男性用ブラジャーは「Wii」以上のブルーオーシャン戦略成功例か?で使いました「スマートリーン戦略」の資料で行きますと。。
この資料では、
- 楕円の中の文字「スマートリーン戦略」と矢印で使っている青色(赤:0、緑:102、青:153)
- スマートリーン戦略の楕円、差別化/コスト戦略の楕円の中の小さい丸使っている青色(赤:153、緑:204、青:255)
- 「中途半端な戦略」の×印、スマートリーン戦略の四角囲いで使っている赤色(赤:204、緑:0、青:0)
の3色を使っています(細かく言うと文字の黒色と輪郭のグレーがあるのですが、そこはお許し頂きたく。。)私は、おおよそこの3色でまとめるようにしています。基本的に、青色をベースに、強調したい点を赤色にするイメージですね。
また、色ははっきりとした「原色」ではなく、おとなしい色合いの「中間色」を好んで使っております。「中間色」のほうが、全体的に資料が落ち着きますね。目にも優しいらしいです。
加えて、「輪郭線は、(1)消すか、(2)必要な場合はグレーにする」ことを心がけています。Apple社のHPを見て頂くとわかるのですが、彼らはグレーが大好き。ipodもiMacもそうですが、メタリックなグレーっぽい色彩を多用してますよね。そもそも中間色というのは、原色にグレーを混ぜた色ということらしいんです。「黒でなくグレー」にすると、落ち着いたいい感じになりますね。是非お試しを!
5.「文字の羅列は死んでもやらない」と固く誓う
コンテンツがグラフの場合はあまり悩むことないのですが、「文章」の場合、どうしても下記のようなプレゼン資料になってしまいがちですよね。。聴衆からすると、文字の羅列は結構キツイです。また、文字の羅列は、メッセージを絞り出しきれていないことが多いように思います。
ここを何とか踏ん張ってですね、「俺は文字の羅列は死んでもやらない!」とがんばって、こんな感じにしたらどうでしょうか。。
どうでしょう。大分とすっきりしませんか?結構線がいっぱいの「表」にしてしまうとBusyな感じになってしまうんですが、項目だけを軽く影をつけた白い箱で作ってやって、その内容はその横に箱には入れずに併記する感じにしてやると、結構すっきりしますね。文章の羅列の時に比べると、第一印象がまるで違うと思うのですが、如何でしょうか。
「文章の羅列」は、「思いつきの羅列」になりがちです。今回ご紹介したフレームを一つ参考に、是非もうひと踏ん張りを!
6.「成功したプレゼンは骨の髄まで使いまわす」と固く誓う
ここまで苦労して作ったプレゼン資料。ですが、プレゼンが終わったらすぐお蔵入りになってませんか?これは非常にもったいない。。。
私は、「私のプレゼンフォーマット集」なるパワポデータを一つ用意してまして、一つプレゼンが終わりますと、その中から今後使えそうなフォーマットをピックアップしまして、「私のプレゼンフォーマット集」に追加しています。苦労して作った秀逸の(?)フォーマットたちが「ワン・ストップ・データベース」のようになっています。
「うまくまとまらんなぁ」と悩んだときに、このフォーマット集を頭からざざざっと見ていくと、「あっ。これ使えるやん」という感じで、意外と昔の財産の転用が利くことがありますよ。
聴衆は私の過去のプレゼンを知らないわけですから、フォーマット集からの使いまわしは何の問題もありません。色々考えて、時間をかけて新しいフォーマットを考えたとしてもまだ完成度は低く、それよりも以前プレゼンで使い成功したフォーマットを使いまわすほうが完成度は高く、聴衆にメッセージをしっかりと届けることが出来ると思います。
皆さん、堂々と胸を張って、自分が魂を込めて作ったフォーマットを骨の髄まで使いまわしましょう!
最後に:プレゼンの目的は「何かを伝えること」
結構外見にこだわる、若干偏った内容になってしまいましたが、今回お伝えした内容は、
- 何かを効果的に伝えるためには、ある程度の「身だしなみ=外見」が必要
- 何かを効果的に伝えるためには、ある程度の「型」にはめると効果的
を意識しており、あくまで、プレゼンの目的である「何かを効果的に伝えるための手段」であると考えて頂けるとありがたいです。
「外見より中身が重要。」もちろんその通りです。しかし、合コンのシーンを考えてみると、どんなに性格に良い「イイやつ」でも、ある程度の「身だしなみ」を備えていないと、女の子に話も聴いてもらえないというのが実情ではないでしょうか。
かっこよくて、斬新で、新しい。そんな必要は全くありません。プレゼンの目的「何かを伝える」は絶対忘れずに、プレゼンのテクニックはその「手段」であって、テクニックを磨くこと自体が「目的」とならないよう、気をつけましょう。私自身も。。
今回ご紹介した内容が少しでも参考になれば。