箭内道彦著「サラリーマン合気道」からの珠玉の3つの言葉

長らくご無沙汰しておりました。。以前自分の仕事を作る〜ブック・ディレクター幅允孝(情熱大陸より)〜でも少し紹介させて頂きました、新進気鋭の広告製作会社「風とロック」の代表で、現在NHKトップランナー」の司会者でもある箭内道彦さんの最新著書「サラリーマン合気道」。私は以前より箭内さんの大ファンで、少し前にこの著書も読んでいたのですが、最近再読しました。この著書には箭内さん独自視点の45の仕事術・言葉が紹介されているのですが、断腸の思いで45個から私的に大切にしたい3つの珠玉の言葉を選びまして、ご紹介したいと思います。


まず「サラリーマン合気道」とは。。

箭内さんは依然より「クリエイティブ合気道」という言葉を語っておられまして、それをクリエイティブ業界だけでなく、幅広くビジネスパーソンにも広げてみようよというのが箭内さんの主張です。

合気道」という武術は、柔道・相撲などの自分の力のみで相手を打ち負かすのではなく、相手の力を利用してより遠くに相手を投げ飛ばす武術なんですね。この考え方を私達の仕事にも生かせるのではというのが「サラリーマン合気道」。下記の箭内さんの言葉で「サラリーマン合気道」の真意、伝わりますでしょうか。

自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。だって、天才でも手品師でもないんだから。相手と向き合って初めてそこから生み出せばいい。そのことに気がついて、少しでも楽になってもらえたら幸せです。(「サラリーマン合気道」P213 あとがきより)

つまり、自分の個性やこだわりばかりに縛られるとおのずといつかは限界が来る、そうではなく、仕事相手やその時の空気に「流されてみる」ことにより、実力以上の力が発揮できるのではないか、というのが「サラリーマン合気道」のエッセンスであります。

私が思う「サラリーマン合気道」、箭内道彦氏のすごさ

この本を手にとって頂くとよくわかるのですが、かなり極端な逆張りの主張が展開されています。例えば45個の言葉のうちの1番目、「アイデアは書き留めない」。。箭内さんは、「ひらめいたアイデアをメモしたり書き留めたりしてはいけない」とおっしゃってるんですが、それはなぜかという理由、これがかなり腹落ち良いのです。

イデアというのは変化していくものであり、その日のニュースや、たわいもない会話などを受けて「化学反応」を起こすもの。なので、アイデアをメモすることにより文字や図にして輪郭を固めてしまうと、アイデアが周囲の環境の影響を受け、化学反応を起こす機会を奪うことになり、アイデアがより良いものに育っていかない、というのが箭内さんの主張です。

このように、極端な逆張りの主張が腹落ち良く論理立てて説明できるのは、それだけ箭内さんが実体験で悩み、必死でその答えを見つけようとした軌跡によって、思考が化学反応を起こして、ひとつの珠玉の言葉になってるんだと私は思います。「わかりやすくて深い」んですよね。。

では、さっそく珠玉の3つの言葉です。

珠玉の言葉1:仕事に私情を紛れ込ませる

私も結構そうなんですが、「これは自分の仕事と言えるような仕事をしたいな」と思いながら「これって誰がやっても一緒じゃないだろうか」などと悩んだり不安に思ったりすることがあると思います。そこで箭内語録なんですが。。

仕事にプライベートなメッセージを込めることで、自分の仕事だという実感を持つことができる。そして、それは世の中に対してより届く仕事になる(「サラリーマン合気道」P180より)

箭内さんは、広告の仕事に「勝手に」自分のメッセージを入れるようにしているそうです。例えば、箭内さん作成のCMで、52人のお笑い芸人が登場する男性化粧品「UNO」のCM。箭内さんは当時良く言われていた「ナンバーワンよりオンリーワン」という風潮がすごくいやで、「同じシリーズのCMをひと晩で54タイプ放送する」というギネス記録に挑戦することにより、「一番になりたいってもっと言おうよ」というメッセージを「UNO」のCMに込めたというんですね。

そうやって「勝手に」プライベートなメッセージを仕事に紛れ込ませることにより、自分の仕事だという意識も高まり、仕事の質も良くなるはずだという箭内さんの主張。これであれば、明日からでも実践できるかもって思わせるところが「サラリーマン合気道」の素晴らしいところです。

珠玉の言葉2:優先順位の低いものに時間をかける

最近は時間管理の重要性がよく言われてますよね。「優先順位をつけなさい!」とか、「もっと効率的に!」などなど。なんですが、将来のことを考えると、将来に繋がる仕事というのは、必ずしも大きな仕事とは限らず、小さい仕事で生まれた人間関係やアイデアから、将来を支える新規事業の種を見つけた、なんていうこともありますよね。そこでまた箭内語録であります。。

優先順位をつけないことで、仕事は有機的に結びつき、密度を増していく(「サラリーマン合気道」P100より)

箭内さんは、優先順位が一見最下位に見えるような仕事を、めちゃくちゃ一所懸命にやってるとおっしゃってます。その代表がフリーペーパー「月刊 風とロック」。今私の手元にタワーレコードで入手した月刊 風とロック 11月号がありますが、あのオノ・ヨーコとのロングインタビュー、たくさんのポートレイト写真他。。なかなか紙質も印刷も高レベルな感じ。確かに気合入ってます。定価0円。大赤字だそうです。。

なんですが、「月刊 風とロック」をきっかけにした出会いから、本業の広告に出演してもらったりとか、まさしく「有機的な結びつき」が生まれているそうです。

(最近さぼり気味で大変恐縮なのですが。。。)私もブログを頑張って書くことによって、色んな意味で有機的なつながりが出来ていることを痛感しておりまして、「優先順位低くても頑張る」ということの効用を実感している一人であります。

また、これもそのとおりだと思うんですが、優先順位が低いものを一生懸命やると、優先順位が高いものは必然的に一生懸命やらざるをえなくなるので、全ての仕事の質が並列になり、トータルでは質が向上するという主張です。そのとおりなんですが、これは結構大変そう。ちなみに箭内さんは毎日4時起床らしいです。。

珠玉の言葉3:自分を広告する

私はここが「サラリーマン合気道」の肝だと思っているんです。箭内さんは自分の個性やこだわりに縛られるのではなく、相手や環境に流されていくことにより、自分だけの力ではたどり着くことができない、もっと遠くまで行くことができるとおっしゃっているんですが、そしたら、それは「個性」「自分らしさ」と決別することを意味しているのかというと、そうではないと思うんですよね。そこで最後の箭内語録です。。

自分を装い、なりたい自分に整形することで、何度でも人生をやり直すことができる(「サラリーマン合気道 P164より」)

日本では「ありのまま」とか「さりげなさ」を素晴らしいとする風潮が強いですが、もしかしたら、「ありのまま」であることのほうが失礼であるかもしれない、というのが箭内さんの主張。つまり、ありのままではない、装った姿を世の中に積極的にアピールし、自分をもっと広告していいのではないかとおっしゃってます。

箭内さんはクリエイターとしての自分を広告するために、金髪にしたり、服装を派手にしたり、自分の見せ方をかなり意識して考えているそうです。確かにかなり派手。。そして、私は下記引用部分が箭内さんの真骨頂だと思っております。

「ありのまま」ではなく、自分で好きなようにキャラクターを作って存在できるから、世の中は面白いのです。服装や態度と言った見せ方一つで、ちょい不良風でも、真面目風でも、どんなキャラクターでも装うことができる。もし気に入らなくなったら、いつでもやめたり、変えればいいのです。何度でも自分を広告し直したり、作品化することができるということは、人生がいつでもやり直せるということを意味します。自分で自分を作り、何度でもデビューし、生まれ変わることができるのです。(「サラリーマン合気道」P163より)

つまり、「個性へのこだわりの呪縛を離れ、流されてみる」ということは、個性へのこだわりを捨てるということではなく、「今の自分の個性」に安住するのではなく、流されることによって常に個性を見つめ直し、「もっとよりよい個性」をゲットしょうじゃないの、ということだと私は今回の再読で再認識した次第です。

「今の個性に安住するのって、何かもったいなくない?」。箭内さんの声が聞こえてきそうですね。

「サラリーマン合気道」、ぜひ皆さんご一読下さい!

サラリーマン合気道―「流される」から遠くに行ける

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