自分の仕事を作る〜ブック・ディレクター幅允孝(情熱大陸より)〜

先日10月19日(日)の情熱大陸を御覧になられましたでしょうか。私にとっての「情熱大陸」は私の「パーソナルカミオカンデ」に組み込まれており(「パーソナルカミオカンデ」については私のエントリー「パーソナル・カミオカンデをデザインする」「私のパーソナル・カミオカンデをご紹介します」をご覧下さい。)毎回楽しみに見ておりますが、10月19日(日)の「人」、ブック・ディレクター幅允孝さんのお話に非常に思うところがあったので、少し書いてみたいと思います。


ブック・ディレクター 幅允孝とは

選書家、ブックディレクター、編集者、執筆家。有限会社BACH(バッハ)代表。
BACH(バッハ)主宰。慶應義塾大学法学部卒業。青山ブックセンター六本木店、建築・デザイン書のバイヤーを経て、(株)ジェイ・アイ入社、書籍の編集二十時。その後独立し、2005年10月に選書集団・BACH(バッハ)を設立。「Tsutaya Tokyo Roppongi」の本棚のプロデュースで脚光を浴び、その後本に関わるあらゆる分野で活躍。社名は自分の名前に由来する。選書、編集、執筆、企画、ディストリビューションなど、本をツールに幅広い分野で活動している。(Wikipediaより、若干加筆修正)

簡単に言うと、「本に関することは何でも手がける」という感じでしょうか。番組ではいろんな幅さんのお仕事が紹介されてましたが、一番「新しい」と思ったのは、「本棚をつくる」お仕事。。。

一番わかりやすいのは書店の本棚・平台を幅さんがプロヂュースするかたち。「SHIBUYA PUBLISHING&BOOK SELLERS」という書店の本棚を幅さんが手がけ、なんと客単価は一般書店の3倍だとか。。。

幅さんの「本棚」は書店にはとどまりません。例えば大阪の「千里リハビリテーション病院」。リハビリ専門の病院ですが、この患者さんが本を通じ、手を動かすなどの「身体的なリハビリ」と、心を潤す「精神的なリハビリ」に寄与する本1,200冊を幅さんがセレクト。幅さんの愛に満ちた本たちが、懸命にリハビリに頑張る患者さんを支えていました。ちなみにこの病院をプロデュースしたのは、今最も輝いているクリエイターの一人、佐藤可士和さんですね。

また、それ以外にも、革新的な経営手法で知られるスルガ銀行東京ミッドタウン支店の本棚、広島の新しく出来る結婚式場の本棚などなど。結婚式場では、世界各国の「愛」に関する本たちの中で、幅さんの一押しがあのドラえもんの「のび太結婚前夜」。新婚さんが肩を寄せ合い、「のび太」が「しずかちゃん」と結婚するまでの苦しく切ない道のりを一緒に読む。そんな空間をプロデュースするのが幅允孝さんの「新しい仕事」であります。

幅允孝を見て、箭内道彦の「クリエイティブ合気道」を思い出す

幅さんが代表を務められている会社「BACH」の業務内容。これはとても新しくて、One and Only。BACHのホームページには下記のように書かれています。

1つだけはっきりしておきたいのは、私たちが本という古くさいなどと言われるメディアを扱うのも、全て新しいものをつくるためです。
必要なのは明日のための過去であって、懐かしむためのそれではありません。私たちが本という軸足をしっかり踏みしめつつ、イベントの企画や家具の制作や広告のディレクションなど、本屋らしからぬピボットターンをもう片足で試みるのは、新しいものを生み出したいというBACHの初期衝動からきています。
本という有用な情報ツールを扱う者として、その仕事の領域をどこまでも発明し、広げていきたいのです。

このようなOne and Onlyな仕事をどのように幅さんは作り上げていったか。私はこれを知りたいと思いながらテレビを見ていたのですが、幅さんは「情熱大陸」のディレクターとのやり取りでこんなことをおっしゃってました。

<ディレクター>幅さんにとって、本棚を作るということは、「自己表現」なのでしょうか。
<幅さん>いや。自己表現ではないですね。僕は自分を媒介者だと思ってます。「こんなおもしろい人がいるんだよ」とか、「こんな素敵な本があるんだよ」ということを皆さんにご紹介したいという思いでやっているだけなんですよ。
<ディレクター>自己表現ではないですか???
<幅さん>そもそも、僕の中に表現できる自己なんて無いですよ。。
<ディレクター>。。。。(となっていたと想像。。。)

このやり取りを聞いていて私が思い出したのが、広告プランナーで広告会社「風とロック」代表・箭内道彦さんの名言である「クリエイティブ合気道。」

「クリエイティブ合気道」とは。。。
攻撃してきた相手の力を利用し、関節技、押さえ技等で相手のバランスを崩し攻撃をかわすという合気道の特徴をクリエイティブな世界に応用した箭内道彦氏の独自理論。
相手の要求に対し、相手の力を利用して相手に投げ返す、また制約があればその制約を逆にいかすなど、自分ひとりではなく相手・状況の力を最大限に生かして何かを生み出そうとする手法。(私の解釈)

また、箭内さんの最新著書であります「サラリーマン合気道」の「はじめに」ではこんなことが書かれております。

自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。目の前の相手と向き合ってそこから生み出せばいい。そのことに気がついて、僕は少し楽になりました。流されるからこそ遠くに行けるのだと。

サラリーマン合気道―「流される」から遠くに行ける

サラリーマン合気道―「流される」から遠くに行ける

幅さんは「誰かに依頼されて本棚を作る」という今までにない「新しい仕事」を作り上げたのですが、幅さんはどうやってこれを作り出したのか。テレビを見続ける中で私は「幅さんはこの仕事を作ったんだろうか」という疑問を持ってしまったんです。いや、そうじゃないんじゃないかと。

そこで思い出したんですね。「クリエイティブ合気道」を。

幅さんは大好きな「本」という名の「川」を流れに任せて流れ流されて、色々な出会い、別れを経て、その中で「新しい仕事」が生まれて言ったんじゃないかと。自分ひとりの力で何かを「生み出そう」とせず、流れに任せて流されていったからこそ、自分ひとりでは行けない場所まで行けて、そして幅さんだけの「新しい仕事」が生まれていったのではないだろうかと。

幅さんがいいこと言ってました。「本は僕をいろんなところへ運んでくれる」と。

自分探し、自己表現の呪縛を解かれ、どんどん流れ流されていった結果生まれたものって最高にOne and Onlyなものになってるんじゃないでしょうか。そしてそうやって生まれたものは竹のようにとてもしなやかで、強くて、何があっても折れない。幅さんの生き様を見て、そんなことを思いました。

とてつもなく大きなリスクを背負ってるんだと思うんですが、素敵な生き様だと強く尊敬しました。

そんな幅允孝さん、番組の最後で幅さんが選んでいた「月曜日から一週間がんばっていくための3冊」は最高にOne and Onlyな三冊でした。

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そして。。。

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